国内 2013.11.09

激戦区・福岡でヒガシの牙城崩れず! 筑紫の勇敢なチャレンジ退ける

激戦区・福岡でヒガシの牙城崩れず! 筑紫の勇敢なチャレンジ退ける

fukuoka

福岡県大会を制し、次は花園で全国の頂点を狙いに行く東福岡
(撮影:早浪章弘)

 王者に挑んだ筑紫高校は、すべてを出し切った。さわやかな笑顔で試合を振り返った鶴田馨キャプテンの言葉に嘘はない。
 しかし、東福岡高校はその上を行った。プレーの精度は高く、圧倒的スピードがあり、統制のとれた強いモスグリーン軍団は、“復活”を印象づけた。
 第93回全国高校ラグビー大会の福岡県予選決勝が、9日にレベルファイブスタジアムで行われ、東福岡が31−12で筑紫を下し、14年連続24回目の全国大会出場を決めた。

 ハイレベルの激戦区、注目のライバル対決。
 先に主導権を握ったのは筑紫だった。開始早々、NO8山崎翔太がビッグゲインを見せ、ラインアウトから一気のモールドライブでゴールに迫った。東福岡に反則が出て、スクラムでプレー再開。FWが組み合ったあと、SHからボールを受けたCTB久保惇がスピンも使いながら力強く前進し、仲間の後押しも受けて中央にトライを決めた。
 「先制しないと勝機はないと思っていたので、最初の10分で流れを作りたかった」という西村寛久監督の言葉通り、筑紫の選手たちが早い時間帯から躍動する。

 しかし、東福岡の東川寛史キャプテンは慌てなかった。
 「嫌な抜かれ方ではなかったので、修正できると思った。前半は競り合いになるのがわかっていたので、みんなでガマンしていこうと声を掛け合いました」
 そして9分、東福岡が追いつく。ゴール前左でのスクラムから、まずNO8徳田隆之介が右へサイドアタックし、FWがピック&ゴー。最後はPR石橋海洋がラインを越え、7−7となった。
 その後、ディフェンスを鍛えてきた両チームは相手に得点を許さず、同点のまま前半終了。

 東福岡の藤田雄一郎監督にとっては、前半の攻防は想定内だった。
 「厳しい決勝になるのはわかっていた。ハーフタイムで選手が帰って来たとき、顔には余裕があったので、ラスト30分はボールを動かそうとアドバイスしました。そのための準備はしてきましたから」
 試合再開。東福岡の攻撃はよりダイナミックになった。ロングパスを使って左右に揺さぶる場面が増える。速い詰めで相手にプレッシャーをかけ続け、粘り強いタックルを繰り返していた筑紫だったが、後半11分、穴が開いた。ゴール前中央でスクラムチャンスを得た東福岡が、FWの連続突進後、NO8徳田がインゴールに飛び込んで勝ち越し。その4分後、ヒガシはラインアウトからモールで押してゴール右に迫ったあと、左へ速く大きく展開し、WTB岩佐賢人がトライを奪った。

 19−7。これ以上離されたくない筑紫は19分、カウンターアタックからフェーズを重ねてゴールに迫り、FL西舘真吾が執念で押し込んで5点を返す。

 しかし、屈しない王者はここからが強かった。
 24分、ゴールを背に相手の猛攻をしのいだ筑紫だったが、キックボールをキャッチした東福岡のFB市橋誠が鮮やかなカウンターアタック、左を追走していたWTB岩佐につなぎ、勝利を引き寄せるトライ。29分にも、食らいつく筑紫を振り切った東福岡は、CTB永富晨太郎がゴールへ駆け抜け、3年連続の同カード決勝を制した。

 「連続優勝へのプレッシャーよりも、このチームを今日で解散させたくないという思いが強かったです」と、勝った藤田監督。「今年のチームはどこからでもトライを取れる。ディフェンスの東福岡ということで日本一を取ってきたので、そこもしっかり鍛えてきました。控えにもいい選手がいるし、潜在能力は高いですよ」。さらに精度を高めて、次は花園で全国の頂点を取りにいく。
 
 東川キャプテンの顔にも自信がみなぎっていた。
 「この舞台(福岡県大会)で勝てたことは自分たちの財産になるはずです。自陣でペナルティをしなかったことと、ディフェンスで規律を乱さずガマンできたことが勝因だと思います。夏合宿を通して、全国の強豪とレベル差はないと感じたので、自分たちの持っているラグビーを前面に押し出して、全国大会優勝を目指して頑張りたいと思います」

 筑紫の西村監督は選手の健闘を称えた。
 「子どもたちが筑紫のラグビーをやり切ってくれたことが大きい。それで負けたんだから仕方ないです。負けたことは悔しいですけど、やったラグビーに悔いはない。タックル、タックルの連続、筑紫らしさが出ました。それに、あれだけボールを動かして強い相手に勇敢に戦ったので、それでいいと思います」

 花園への夢は絶たれた鶴田キャプテンだが、笑顔だった。
 「やることをやり切りました。前半は気持ちで上回っていたと思うし、後半はぶっ倒れてもいいと思っていました。ロケットで(出足速く)とにかく前へ出てプレスをかけることを心がけ、そこで飛ばされるなら仕方ないと割り切って、とにかく圧をかけました。ヒガシの後半のアタックはすごかったけど、自分たちはバテてなんかいない。走り負けたんじゃないんです。ただ、ヒガシが強かった」
 筑紫の頼れるリーダー、鶴田の左手首に巻かれた白いテーピングには、試合に出られなかった選手とマネージャーの全員の名前が書かれていた。「仲間の思いも力にしようと思って。試合中、きつくなったらこれを見ようと思ってたんですけど、見る間もなかったです(笑)。それだけ、最初から最後までやり切りました。悔いはないです」

 福岡県の戦いは終わった。全国大会は12月27日に開幕する。

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