帝京大と早大。接戦を演じた両者の距離は。
帝京大×早大は40-31と最後まで競る好ゲームに。
写真は後半30分、早大SH平野航輝のトライ。(撮影/松本かおり)
6月30日に22-17、8月25日は39-24。そして、昨日は40-31だった。帝京大と早大の今季に入っての対戦成績は、真紅のジャージーの3勝となった。果たして両者間の距離は、試合を重ねるごとに近づいているのか、遠ざかっているのだろうか。
11月3日、秩父宮ラグビー場でおこなわれた関東大学対抗戦Aの帝京大×早大は、40-31と帝京大が逆転勝利を手にした。勝者は前半17分までに0-11とリードを許すも、ハーフタイムまでに3トライを奪い19-11といっきに追い越す。後半に入り、もう一度早大に勢いを与えて30分には26-26と同点になるも、そこから2トライを奪い、押し切った。
これでもかとタックルを繰り返し、セットプレーは安定。高い集中力で機先を制した早大の立ち上がりは見事だった。帝京大は、何度でも刺さろうとする矢をはじき飛ばして前進した。ボールをよく動かすスタイルで圧力をかけ続けたのも王者の矜持。『対抗戦の重み』の中で、現状の力を出し切ったことに触れ、帝京大・岩出雅之監督は「いい試合だった」と言った。
果たして両者間の距離は。
この試合に向け、どこで帝京大を上回るかと考えた早大サイド。
後藤禎和監督は、こう言った。
「スクラム、ラインアウトなど、セットプレーの安定。大きな相手を前で止める。そして、分厚いキックチェイスなどひたむきなプレー」
この3点を貫いて勝機をつかむ腹づもりだった。
「しかし、前半の途中から、キックチェイスなどが破綻し、トライを3つ取られた。あの時間帯が試合を決定づけた」
監督は淡々と振り返った。
「とてもいい『入り』ができたと思います。後半途中で追いついたとき(26-26)も、いい集中力があったし、永遠に走り続けられるような気持ちでした」
自分たちのペースとなった時間帯を、垣永真之介主将はそう語った。思惑通りだったはずの戦いは、なぜ崩れたのか。
「キックチェイスなど、共有すべきものの意識が薄くなってしまった。前半の終わりの方は、(何度も)体を当てられ、走られ、無酸素状態が続いて疲労感もあった。リードしたことで受けてしまったところもありました。(後半の同点後も含め)ペナルティを恐れたり、丁寧に…という意識になってアグレッシブさに欠けてしまった」
そう語って唇を噛んだ主将だが、「通用した部分はたくさんあった」とも感じた。
後藤監督は、春、夏と比べての体感を問われて答えた。
「(帝京大との)距離は縮まっている実感がある。最初の20分は規律高くプレーでき、自分たちの方が上回れていた」
そしてキッパリ言った。
「残された時間、やってきたことをやり続ければ勝てる」
帝京大・岩出監督は、いくつかのプレー、何人かの選手に、まだ責任感が不足していると指摘したものの、この試合の重さは「学生の成長に必要なもの」と前向きにとらえた。
そして、全力で勝利をつかみにいった選手たちの姿勢を評価した。
「(試合の)立ち上がりに踏めなかっただけで、(開始)30分過ぎからアクセルを踏んだわけではないと思う。精一杯のことをやった結果の勝利」
両チームの現在地については、こう言った。
「たとえ今日、大勝したとしても、(早大との距離が)開いたと思わなかったでしょう。接戦でも、縮まったとも思わない。一喜一憂せずに成長していって、最後はどちらが笑っているか、でしょう」
中村亮土主将も落ち着いた口調だった。
「(試合前に)後半20分からは帝京の時間だよ、と話して臨んだ試合でした。互いに締まったゲームが出来た。ただ収穫もあれば、いろんな反省点もある。(大学)選手権ではレベルアップした試合がまた出来ると思う」
両チームとも、頂点に立つためには再戦を避けられない相手と認め合っている。そして、もう一度戦いたい思いも強い。