国内 2013.09.15

熱量で上回った。NEC、魂の金星を刻む。

熱量で上回った。NEC、魂の金星を刻む。

死闘の末の明暗。NEC浅野良太主将(左)とサントリー真壁伸弥主将。(撮影/松本かおり) 

 

 

 

■ジャパンラグビートップリーグ 2013-2014/第3節
■2013年9月14日/秩父宮ラグビー場
NEC 34-33 サントリー

 

サントリーのお株を奪った。『アグレッシブ』を最初から最後まで貫いたのは、NECの方だった。

 

 いつもハードな試合となる両者の対戦。NECの先制パンチは見事だった。

 

 前半2分、FL浅野良太主将、PR瀧澤直の好走でサントリー陣深く攻め入った後の攻撃。スクラムからフェーズを重ね、LO村田毅が防御を突き抜け、トライラインを越えた。
 11分、PGで追加点。
 PKから速攻を仕掛けた14分には、CTBニール・ブリュー、WTB釜池真道でロングゲインし、リターンパスを受けたブリューが飛び込んだ。
 24分、SH櫻井朋広がハイパントを蹴る。WTB吉廣広征が必死にチェイスして反則を誘い、PGで加点。立ち上がり20分強で18-0となったスコアは、最後までチャレンジャーを勇気づけた。

 

 序盤で背負った18点のビハインド。それでも慌てず、淡々と反撃に転じたサントリーの地力もさすがだった。
 31分にフェーズを重ねてWTB長野直樹、37分にCTB平浩二がインゴールに駆け込んで前半を9点差で終えると(12-21)、後半に入って凄味を見せた。2分にPGで加点を許して12-24とされた後、結束が高まる。
 13分にPKからタッチに蹴り出し、ラインアウトからモールを押し込む。19分、FL佐々木隆道がインゴールに飛び込んだとき。33分にCTB平がフィニッシュしたとき。両トライ時、前へ出続けるアタックの波は凄まじかった。
 気づけば33-24。黄色のジャージーが逆転、9点のリードを奪ったのだから勝負は決したかと思われた。

 

 しかし残り7分、NECは試合開始時の集中力を持って戦い、勝利を手にした。
 トライを奪われた後のキックオフで猛プレッシャーをかけて反則を誘い、迷わずPGを選択して6点差に詰める(36分/27-33)。そして、その直後のキックオフレシーブ後の判断も落ち着いていた。
 田村が敵陣に蹴り込む。残り時間が少ない中でボールを手放したのも、「まずは自分たちのアタックゾーンに入ることが大切だと思っていた」(浅野主将)と、全員の意志が統一されていたからだ。予想していたとおり、キックを受けたサントリーは攻めてきたから、全員で圧力をかけた。反則を誘う。PKを敵陣タッチに蹴り出し、ラインアウトからのアタックで波状攻撃を続けた。

 

 サントリー陣ゴール前、ラックの真上からボールをインゴールに置いたのは巨漢のWTBネマニ・ナドロ。田村がフルタイムを知らせるブザーの中で逆転のコンバージョンキックを決め、グリーンのジャージーが飛び跳ねた。歓喜の輪を作った。

 

 最後の数分を両チームが振り返った。
「(サントリーが9点差とするコンバージョン)キックを蹴る間、インゴールで全員で話していました。自分たちのことを最後まで信じよう。何で勝つんだ? 相手より鋭い動き出しで勝つぞ、と。すぐにPGを決めて6点差として、トライを取りに行こうと、より明確に戦えた」と浅野主将。「相手は最後まで絶対に攻撃的に来るから」という確信のもと圧力をかけ続け、ラストチャンスを攻めきった。

 

 サントリー佐々木は、勝者の気迫を称えた。
「最後までアタッキングラグビーをやり切れなかった。でも、それは20%の敗因でしかない。80%は立ち上がり。あの点差を逆転できたのは自分たちにベースとなるものがあったからだけど、それを最初から出せず、受けてしまったことがすべて」

 

 最初と最後だけでなく、総熱量で上回った側が笑った。

 

 

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