【RWCセブンズ現地発】「まだ咲いていない」サクラセブンズ。最終日、上を向く。
最終日こそ咲き誇りたい「サクラセブンズ」。(撮影/長尾亜紀)
ただの世界大会とは違う。すべてのチームが、最高の状態で臨む。ワールドカップの質の高さと怖さを思い知った。サクラセブンズだ。
ワールドカップ・セブンズの2日目。この日から始まった女子の部で、日本代表は勝利を手にすることができなかった。プールDで、10-14(対ロシア)、0-39(対イングランド)、0-43(対フランス)の成績だった。
サクラセブンズはこの日、初戦のロシア戦で「自信のつく敗戦」を喫したはずだった。
浅見敬子ヘッドコーチが「自信のつく…」と表現したのは、ボールを持てば、主導権を握って相手を動かせたからだ。鈴木陽子が挙げた2トライは、全員で相手より多く動き、先にポジショニングし、たくさんパスをつないでのものだ。フィニッシャーが、「私は飛び込むだけでよかった」と語ったのは、相手を崩しきって奪った証拠。地元ファンからのロシアコールが響く完全アウェーの中で、残り約2分までリードし続けた。
中村知春主将も、「ボールを動かせばやれる」と振り返った。
しかし、イングランド戦は沈黙の時間となった。キックオフ直後、好タックルが出るもサポートプレーヤーにボールをつながれて先制トライを許す。キックオフボールを競るかやめるか躊躇した大田黒裕芽が、ジャンプした相手の足もとをすくうような形になってレッドカード。6人となった後は一方的だった。
開始直後からイングランドと日本は、体つき、プレーの質とも大きく違っていた。それは互いの『現在地』が露わになっただけだったが、その後くずれた。
ピッチに立った者は世界トップの正確さとパワー、スピードを感じた上に、数的不利の波に飲み込まれた。0-39の完敗に、「何もさせてもらえなかった。14分があっという間だった」と語ったのは鈴木彩香。中村知春主将は「冷静になるいい機会」と語った。
ただ、ロシア戦で勝てるチャンスを逃し、イングランド戦で流れを失ったチームは、フランス戦であらためて勢いを出すことはできなかった。セットプレーが安定せず、接点で食い込まれる。攻めても守っても前に出られないから取り切れず、防御を破られる。0-43の結果は、チームの状態を如実にあらわしていた。
初日の戦いを終えて、浅見敬子ヘッドコーチは「痛いほど(トップ6との)違いが分かりました」と語った。
「こちらに疲れもあったかもしれませんが、例えばセットの精度などが全然違う。苦い経験はくり返し味わってきました。這い上がっていくしかない」
「これがワールドカップ」と言ったのは中村主将だ。
「トップ6との力の違いを肌で感じました」
でも、それで下を向いたり、あきらめたりしない。それがサクラセブンズだ。
キャプテンの中村は「私たちは図々しいので切り替えられる。明日、出し切ります」と言い、鈴木彩香は「練習でやってきたこと以外のものは出せないけど、いま持っているものを出し切って戦いたい」と気丈に話した。
レッドカードで(イングランド戦)退場も、レフリー、アシスタントレフリーを交えての試合後の聞き取りを経て、大黒田に追加処分は下されなかった。
フランス戦の途中からふたたびピッチに戻ったチーム最年少は、「(退場で迷惑をかけたけど、励ましてくれた)みんなに感謝して、自分がやるべきことに集中した。明日は、積極的にプレーしたい。自分で行くところはいく。周囲を活かす。気持ちを切り替え、チャンスメーカーになる」。
最終日、ボウルトーナメント準々決勝で対戦する相手はオランダ。セブンズ・ワールドシリーズに参戦するコアチームのひとつだ。
疲れている。暑い。でも、それは誰だって同じだ。そんな状況をプラスに転嫁できる覚悟があれば状況も変わる。「まだ桜の花を咲かせていない」という思いが、チームにパワーを与えられるか。
「いま狙える、最高の成績を狙う。9位。絶対9位になります」
キャプテンは上しか見ていない。あと4試合戦うつもりだ。