2019へ翔け若人! 福岡のGWを経験したNZ、イングランドの有望株たち
サニックス2013ワールドラグビーユース交流大会で優勝したNZのセント ケンティガン カレッジ
(撮影:Hiroaki. UENO)
今年のゴールデンウィーク期間中、福岡・グローバルアリーナで汗を流した高校生ラグビーマンのなかから、おそらく、何人かが2019年ワールドカップ日本大会で輝くだろう。CTBのTJ・ファイアネ、PRジェソロ・フェレミ、FLブレイク・ギブソン、SHサム・ノック、WTBスリアシ・ヴニヴァルはオールブラックスになるかもしれない。イングランドには、PRジョージ・エジソンや万能な闘将エリス・ジェンジがいた。SOジェームス・タトル、NO8リース・ヒューワットがワラビーズのジャージーを着て、南アのSHフランソワ・ネルがデュプレア2世と呼ばれる可能性だってある。
「サニックス 2013 ワールドラグビーユース交流大会」では、海外選手も奮闘した。
ロシア勢が初参加し、その先陣となったエニセイ−STMは韓国(ぺクシン ハイスクール)とフランス(リセ A.R. レサージ)から勝利を挙げた。トップ4は、シニアでもラグビー大国のニュージーランド、イングランド、オーストラリア、南アフリカが独占。
特にファンの注目を集めたのがイングランドのハートプリー カレッジだった。プール戦で常翔学園と長崎南山を圧倒した大型チームは、スピードとテクニックに優れ、一体感があり、決して手を抜かないプレースタイルから、「大会史上最強のチームではないか」という声を聞いた。
しかし、それを上回ったのがニュージーランドのセント ケンティガン カレッジだった。茗溪学園の高橋健監督が「いくら走り回って穴を開けようとしても、崩れなかった」と脱帽した組織ディフェンスは見事で、アタックを得意とする国の若人らしく、決勝戦でも6トライを重ね、イングランドチームを40−8と圧倒した。スコットランド系の学校ということで、試合前にも優勝後にも“ハカ”のお披露目はなかったが、迫力は十分だった。
本大会初参加で、海外のチームと試合をしたのは初めてというケンティガンだが、元オールブラックスのFLジェローム・カイノ(トヨタ自動車)や、WTBジョー・ロコゾコ(バイヨンヌ)、PRジョン・アフォア(アルスター)などを輩出したオークランドの名門で、昨年はニュージーランド高校選手権を制している。
「非常にいい経験をさせてもらった。大会運営側はプロフェッショナルだったし、日本の選手たちはとても献身的にプレーをしていて、規律がすばらしかった。彼らと試合をすることができてとてもよかった」とタイ・ラヴェアHC(ヘッドコーチ)。ニュージーランドの新シーズンが始まるのは次の土曜日からで、3カ月くらい前から準備をしてきたという。「決勝のアタックは今大会でもよかった方だが、ディフェンスが最大の勝因だと思う。我々のチームは個々の能力が高く、スピードがあり、スキルがある。チームプレーを大事にし、トップクオリティーを持つ選手が多かったのも優勝につながったと思う」と大会を振り返った。
一方、最後に屈したハートプリーのダリル・ヒルHCは、「来日する直前にイングランドの長いシーズンを終えたばかりで疲れはあったが、当然、初優勝へのモチベーションは高く、選手たちは大会を通して気持ちを切らさず、よく戦ってくれた」と労った。「しかし、前日の準決勝・南アフリカ戦がすごくフィジカルなゲームで、選手たちはクタクタになった。NZ側はそれ知っていたので、決勝は前半からアグレッシブに点を取りに来て、我々は一気に主導権を握られてしまった。自分たちにミスが多かったのも、疲労が原因だと思う」と万全な状態でなかったことを強調した。
確かに、イージーミスをほとんど犯さないチームのはずが、ハンドリングエラー、キックオフ失敗、ラインアウトミスを重ね、リズムを悪くした。フラストレーションがたまったか、後半、イングランドLOの危険なタックル(のちにレッドカード)から両チームともエキサイトして殴り合いに発展し、今大会MVP級の活躍をしたニュージーランドのFLブレイク・ギブソンと、イングランドの主将エリス・ジェンジが一時退出となってしまった。
「我々のキャプテンは、今日の試合で多くのことを学んだだろう。彼は熱血漢ですごく残念な行動に出てしまったが、とても正直者で、忠誠心があり、人間性もすばらしい男なんだ。今大会を経験できて、彼はきっと成長する。今日、11番をつけてプレーしていたエリス・ジェンジを覚えていてほしい。彼はバックローとPRでもプレーすることができ、おそらくイングランド代表として2019年ワールドカップで再び来日するだろう。我々のチームには、すばらしい才能を持った選手が多い。帰国したら、この中から3、4人がプロチームと契約を結ぶ予定だ」
ハートプリーカレッジはイングランドの歴史あるラグビー強豪校だが、ヒルHCはウエールズ人。ミスター・シギー・コンノ(金野滋/元日本ラグビー協会会長)率いる日本代表が1973年に初めてウエールズ・イングランド・フランス遠征をしに来たときから日本のラグビーのすばらしさを知っていると語り出し、「最後まで決してあきらめない姿勢は、今大会の日本の高校生からもよく感じられ、スピードとエナジー、集中力、それにラグビーへのパッションは、非常に感心した」との言葉を残した。
5月、「博多どんたく」をじっくり満喫するひまもなく、多くのラグビー少年が楕円球を懸命に追い、勇敢にぶつかり合いタフになった。きっと、かけがえのない財産を得た、と信じたい。
来年はどんなドラマが見られるだろうか。このすばらしいイベントがますます発展し、20回大会、30回、50回と続きますように。
敗れたイングランドの選手たち(赤)も福岡で貴重な経験を積んだ
(撮影:Hiroaki. UENO)