天国の父へ捧ぐ。７人制日本代表、ジェイミー・ヘンリー奮闘。

鋭いランニングを何度も見せたジェイミー・ヘンリー。（撮影／松本かおり）

『TOKYO SEVENS 2013』初日が終わった。７人制日本代表はカナダに勝って（14-10）好スタートを切ったものの、ニュージーランド（5-41）、フランス（7-24）に敗れ、プールＣの４位となった。２日目はボウルトーナメントに進み、初戦はウエールズと戦う。

　フランス、カナダと同じ勝ち点だったが、得失点差で最下位に沈んだ。ブレイクダウンを戦いの軸に置きながら、そこで反則をとられてリズムを崩した。修正と徹底の両立が明日の鍵だ。これまでやってきたことの明暗が浮かんだ一日。そんな中で１勝を挙げられたのは、何よりも『先手』が大きかった。課題だった試合への入りをクリアし、チームの雰囲気はグッと上がった。

　勝ったカナダ戦の立ち上がり。キックオフのボールを桑水流裕策がタップしてマイボールにする。キャプテンの坂井克行が前に出て、ボールをつなぐ。その後のアタックが鋭かった。キレのいいランニングで前に出たのはジェイミー・ヘンリーだ。パスが乱れ、攻撃は継続できなかったが、一連の攻撃がチームに勢いを与えた。

　前半2分過ぎに奪ったロテ・トゥキリの先制トライ。そのキッカケを作ったのもヘンリーだった。鋭く走り、ラインブレイク。防御を崩したところにトゥキリが走り込んだ。
　そしてヘンリーは、後半、自陣ゴール前で相手がこぼしたボールから攻めたジャパンの攻撃を仕上げた。成田秀悦が仕掛け、羽野一志が大きくゲイン。できるだけゴールポストに近いところでトライを決めたいから、羽野はグラウンディング直前に内側にパス。ヘンリーが、インゴールにボールを置いた。
「ジェイミーが大きな声で呼んでくれたから」と羽野。ヘンリーは、「羽野は優しいね」と笑った。

　この試合でよくアタックに絡み、勝利を呼んだヘンリーは、前週の香港大会を終えてから加わったニューパワーだ。「セブンズなんてほとんどやったことがないんだ」と苦笑する。この春、立正大学での4年間の生活を終えたばかりだ。
「（関東大学）リーグ戦のセブンズ大会ぐらいしか経験がないんだ。でも、瀬川さんは『アタックで頑張ってくれればいいから』と言ってくれたから思い切ってやれている。ディフェンスでは僕だけ遅かったりするんだけど（笑）頑張ろうと思っている」
　カナダ戦を振り返る。
「試合前から、ファーストプレーにターゲットを絞っていた。最初の3分をトップで戦おうとみんなで言い合った。ハーフタイム、瀬川さんは『後半はもっと熱くなろう』と言った。チームの強味であるフィットネスを出せた」

　香港大会前の強化・セレクション合宿から招集されていた。しかし、東京セブンズのちょうど2週間前、ＮＺに住む父・ウィリアムさんが亡くなった。トレーニングを通して高い評価を得ていたが、チームを離れたのにはそんな理由があった。
「とても悲しかった。でも、僕がジャパンの合宿に呼ばれたことを父はとても喜んでいたと母から聞いた。だから今大会では、父のためにも頑張りたいって思っていた」
　トライを決めた後、右手を天に向けて差し出した。
「父へのプレゼント。思いを込めてやったんだ」
　手首に巻いたテービングに、『DAD』と書き込んでいた。

　何度もラインブレイクを見せた男には、２日目も大きな期待がかかる。迷いなくアタックする背番号３に周囲が呼応すれば、香港大会準優勝のウエールズにだって噛みつける。セブンズの魅力を引き出す試合をしたい。