オールブラックスも超えられない偉業 連勝世界記録保持者はリトアニア
IRB(国際ラグビーボード)のランキングは36位のリトアニアですが、ワールドカップ王者のオールブラックスも達成したことがない世界記録を持っています。2006年から2010年にかけてつくった、テストマッチ18連勝という偉業です。これはIRBが認めた公式記録です。
16連勝中だったニュージーランド代表が、2012年10月20日にオーストラリア代表と対戦しました。しかし、ロスタイムに司令塔ダン・カーターが蹴ったドロップゴールは右へ逸れ、18-18の引き分けで、17連勝はなりませんでした。
世界のトップ10が主な対戦相手であるニュージーランドに対し、ワールドカップ予選でも早々に敗退するようなラグビー発展途上国との試合が多いリトアニアでは、連勝の重みが違うかもしれませんが、記録保持者として改めて世界に認知されたことで、リトアニアのラグビー人たちは胸を張ったに違いありません。
リトアニア・ラグビー協会の事務局長はフランス通信社のインタビューに対し、「オーストラリアに感謝します。我々が記録を保持していることはとても喜ばしいことで、誇りです。スポーツですので、記録はいつか破られるとは思いますが、ニュージーランドやオーストラリアのようなラグビー大国と一緒にリトアニアの名前を聞くことができて、大変嬉しいです」とコメントしています。
ちなみに、それまでの世界記録はニュージーランド(1965−69)と南アフリカ(1997−98)が持っていた17連勝でした。リトアニアは2010年4月24日にヨーロピアン・ネーションズカップでセルビアを破り、新記録を樹立。5年間負け知らずでしたが、2010年5月8日のウクライナ戦で連勝記録はストップしました。
バルト海東岸にある人口約300万人の同国では、多くのNBAプレーヤーを輩出しているバスケットボールが最も人気のあるスポーツだそうです。国内にもラグビーのリーグ戦はあるようですがアマチュア選手ばかりで、ナショナルチームの数人はスウェーデンやイングランドなどでプレーしています。それでも、すべての主要都市にラグビークラブがあるといわれ、IRBによれば、国内にクラブは23チーム。競技人口は3000人を超えています。
しかしながら、冬はマイナス20度を下回ることもあるほど寒く、1年のうち4か月は極寒によってグラウンドが凍結してしまうので、レベルアップには苦労しているようです。
でも、ソビエト連邦から独立後、リトアニア代表として初めて公式試合を実施したのは1993年で、初勝利は1996年10月のルクセンブルク戦だったことを考えれば、彼らの進歩は目を見張るものがあります。
2011年ワールドカップ出場を目指した長い戦いでは、欧州4次予選まで進出。10年前のランキングは70位前後でしたが、現在は36位にまで上昇し、ヨーロピアン・ネーションズカップのディビジョン2A(欧州4部リーグ)に属しています。
また、2009年に南アフリカの育成名門シャークス・アカデミーで修業を積み、2010−11シーズンはイングランド1部のセール・シャークスに在籍していたリトアニア出身のLOカロリス・ナヴィカス(22歳)が、今年3月にフランス1部リーグのボルドー・ベグルと2年間のプロ契約を結びました。若い世代の成長が楽しみです。
世界トップ20入りまで、あと16ランクアップ。7年後、2019年ワールドカップ日本大会で、オールブラックスの『ハカ』に対峙する勇ましきリトアニア代表が見られたら、不可能と思われた“ドリームマッチ”実現に、世界中が感動の拍手を送るでしょう。
(写真撮影:Yasu Takahashi, Nichigo Press)