国内 2012.09.09

勇ましき九州電力 王者サントリー相手に真っ向勝負 5トライ

勇ましき九州電力 王者サントリー相手に真っ向勝負 5トライ


aramaki


九電のFB荒牧佑輔はサントリー戦で2トライ。元南ア代表ダニー・ロッソウも振り切る
(撮影:松本かおり)


 



 マン・オブ・ザ・マッチは黒木孝太じゃないのか?
 九州電力キューデンヴォルテクスは敗れたけれど、背番号13はタックル、タックル、タックル。日本代表経験の豊富なサントリーサンゴリアスのミッドフィルダーたち、ニコラス ライアンと平浩二を何度もくの字 にし、ボールを奪った(9月8日/秩父宮/トップリーグ第2節)。
 先手を取ったのはサントリー。前半2分、WTB長友泰憲が先制トライを奪う。そして、前半を28−17とリードしたのだから、サントリー側には、後半じわじわとリードを広げる見通しはあっただろう。
 しかし、最後までスタンドを沸かせたのは九州電力だった。
 前半6分にWTB吉田克也が右隅に飛び込むと、10分にはラインアウトから決める。FL松本允主将が鋭く前に出てボールを活かすと、クリス・ジャック、浦真人のLO陣がインゴールまでボールを運ぶ。29分にはPKからFB荒牧佑輔が速攻を仕掛け、自ら蹴ったボールを押さえる。「(サントリーの)ペナルティーへの相手の反応がゆっくりしているのを感じていたので仕掛けてみたらウマくいった」と笑った。相手に4トライを許しはしたが、松本主将、HO佐藤孝樹、CTB黒木らの猛タックルが、試合を引き締めていた。
 後半も、先に得点を追加したのはサントリー(PGで31−17とする)だったが、最後まで元気だったのは九電だ。
 タックルの勢いはやまない。途中出場の選手に勢いを出す。14分にNO8マシュー・ルアマヌがタックルを飛び越えてインゴールに届くと、16分には、またもPKからFB荒牧が速攻で出て、それにFL平田一馬が続く。リターンをもらった荒牧が走りきり、スコアは4点差に縮まった(29−31)。
 最終的には34−29でサントリーの勝利も、敗者と勝者の表情は対照的だった。
 九電・平田監督は、「私たちはトップリーグの14チーム中14番目と認識してシーズンをスタートしたが、負けからも学び、一戦一戦成長していることを感じられるのが嬉しい。きょうは勝敗よりも、4トライ以上取ることを考えた。自分たちのスコアラグビーやり切って4トライ以上とれれば、自然と勝負になると思っていた」。松本主将は、「ディフェンスで前へ。エリアをとって、ワンチャンスを必ずものにする。勝つチャンスがいくつかある中で勝てなかったのは、そこに両者の差があるとは思うが、自分たちのラグビーはやれました」と語った。
 晴れない表情だったのは、勝者の側だ。「相手がラッシュディフェンスをしてくるのは分かっていたのに、ボールキャリアーの判断で長いパスをしたり、普段では考えられない選択をしていた」と大久保監督。真壁主将は「うまくいかない時は、ダイレクトプレー(迷いなく前に出て、身体を当てていくスタイル)を徹底して自分たち本来のプレーに戻すのだけど、今日はそれができなかった」。
 2晩続けて、アップセットの空気が漂った秩父宮。こんな試合が毎週続くなら、週末に家でのんびりするラグビーファンも少なくなりそう。


 

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