【注目の男】 シェーン・ウィリアムズ (三菱重工相模原ダイナボアーズ)
おそらく、三菱重工相模原で選手としてのキャリアを終える。一度は、完全に引退すると発表した。しかし、トップリーグ昇格を目指すダイナボアーズから熱烈なラブコールを受けて、日本でのラストチャレンジを決意した。
シェーン・マーク・ウィリアムズ。35歳。2012年6月、英国エリザベス女王より大英帝国勲章第五位の『MBE』を授与された。ウエールズが誇る英雄。世界歴代3位のテストマッチトライ記録を残した伝説の男だ。身長170センチ、体重80キロと小柄ながら、驚異的瞬発力からなるステップ、ランで最強フィニッシャーとなり、偉大なる“ポケット・ロケット”と呼ばれた。2008年 IRB(国際ラグビーボード) 年間最優秀選手。
かつてのライバルたちは言う。「史上最高のカウンターアタッカーのひとり」(ジェイソン・ロビンソン/元イングランド代表WTB)、「足を動かすことを止めず、ダイナミックさは見る者を飽きさせない」(タナ・ウマンガ/元NZ代表主将)。
ウエールズ史上最高のSOと謳われるバリー・ジョンはこう評した。
「ウィリアムズこそは、1970年代にともにプレーした伝説的WTB、ジェラルド・デービスと並ぶ選手だ」
(以上、『ラグビーマガジン』2012年2月号より)
北のラグビー王国、ウエールズで生まれた男の子だ。小学校に入り、すぐに楕円球を手にした。しかし、当時から同級生たちと比べて身体が小さく、ラグビーをするにはあまりにも小柄だといわれ、中学生になってからはサッカーを始めた。主に、ゴールキーパーだった。しばらく丸いボールのスポーツを楽しんではいたが、14歳の頃、地元のラグビークラブに所属していた友だちから誘われて、再び楕円球を手に走り始める。
当初はスクラムハーフだったが、快足はウィングで活きるようになり、1998年にニースでプロ契約を結んだ。2003年からはオスプリーズに移籍し、同チームでのラストマッチとなった2012年5月27日のセルティックリーグ(ラボダイレクト・プロ12)決勝戦では、大逆転劇につながる2トライを決め、2季ぶり4度目の優勝で花道を飾った。
以下、再び『ラグビーマガジン』誌からの引用。本人へのインタビューより。
「サイズのことはいつも頭の中にあったし、ディフェンスについては誰よりも練習しなければならなかった。相手はいつも、僕の上にハイボールを上げてきたからね。だけど、相手チームがやってくることにはだいたい対応できていたと思う。
プレーするときにいつも考えていたのは、ボールを持ったときに、スタジアムのお客さんやテレビを通して観戦している方々に、最高のプレーを見てもらうということだった。ゆったりと座って観るのではなく、ファンの人たちには、ドキドキして、今にも立ち上がる感じでいてほしいと思ってきた。そんな興奮をいつも追い求めていた」
勝負強い男である。特に大舞台では一段と光り輝く。
2000年2月のフランス戦で国際デビュー以来、ウエールズ代表として87テストに出場。4年に一度、ホームユニオン4協会(イングランド、スコットランド、ウエールズ、アイルランド)のトップスターで結成されるドリームチーム「ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ」としても4キャップを獲得した。ライオンズでの2トライを含めて、通算60トライ。これは、大畑大介(元日本代表)、デイヴィッド・キャンピージ(元オーストラリア代表)に次ぐ、歴代世界3位の偉業だ。
そのなかには、2001年に大阪で行われた日本代表戦での4トライも含まれる。ワールドカップ3大会(2003〜20011)での通算10トライも、ウエールズ代表最多。誇り高きレッドドラゴンとしての最後の試合と決めていた2011年12月3日のオーストラリア代表戦でも、試合終了間際に2人を振り切ってインゴールに入り、雄叫びを上げた。そして、数々の思い出が残る聖地ミレニアムスタジアムで、7万人から万雷の拍手をもらい、フルタイムの笛が鳴ったときには思わず、グラウンドで涙が流れたという。
大金に目がくらみ、ジャパンで半年間のバケーションを過ごすだけだ、と揶揄する者がいるかもしれない。それが本当かウソかは、シェーン・ウィリアムズがグラウンドで証明する。いずれは指導者の道を歩み、ウエールズ代表監督になりたいという夢があるが、まずは日本で完全燃焼してからだ。
三菱重工相模原入りが決まったシェーンは、入団時にこうコメントしている。
「これから日本で生活し、全く違った文化を経験することは非常に魅力的です。そして、私が楽しみにしていることの1つは、ダイナボアーズが非常に意欲的なチームで、トップリーグに昇格するためにチャレンジできることです」
ポジション: WTB
生年月日: 1977年2月26日(35歳)
出身地: スウォンジー(ウエールズ)
身長: 170? 体重:80kg
所属: 三菱重工相模原ダイナボアーズ
【国代表/ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ】
デビュー: 2000年2月5日(対フランス/ウエールズ代表として)
CAP: 91(ウエールズ代表:87キャップ)
トライ: 60 (ウエールズ代表:58トライ)
※ 記事内のデータは、2012年9月8日現在