新生ジャパンで光る仙波の笑顔 新しい領域へ挑戦中
日本代表合宿で充実の日々を過ごしているCTB仙波智裕 (撮影:BBM)
アジア5カ国対抗に向けての強化合宿のため静岡・つま恋に滞在している日本代表は、4月6日も精力的にトレーニングに取り組んだ。セッションは午前中だけ行われ、午後は個人でのリカバリーや休養。合宿は明日(7日)、最終日を迎える。
若手からベテラン、代表復帰組と、様々な個性が集まった同代表。どの顔にも意欲に満ちた表情が浮かんでいるが、CTB仙波智裕のハツラツとした動きが頼もしい。
「刺激をいっぱい受けています。日々、新たなことを勉強している感じ」
経験豊富な30歳の充実は、その笑顔から読み取れた。
ライバルチームを率いてきた知将(エディー・ジョーンズ ヘッドコーチ)のもとに飛び込んだ感覚を、誠実に語る。
「エディーさんは最初のミーティングで、サントリーのラグビーをやるのではない、と言いました。より速く、世界と戦っていけるようにプラスαを加えたものです。それをゼロから積み上げていっている途中。強度の高い練習ですが、楽しくやれています」
東芝ラグビーにフィットしているプレースタイルを変えることも楽しんでいる。自チームでは、深めのポジショニングからズドンと走り込み、フィジカルの強さを活かして前へ出る。でも、ジャパンのコーチ陣から声が飛ぶ。
「(ポジショニングが)深すぎる、と。東芝では体を当てていくスタイルですが、ジャパンでは最終的にはタテに出るんだけど、最初から直線的ではダメと。相手をかわす動き、細工が求められています」
新しい領域への挑戦だが、楽しめている。簡単ではないが、「この取り組みが自分をもっと伸ばすし、東芝にも影響を与えられるかもしれない」とポジティブだ。
明るい性格は、周囲を巻き込み、いい空気を生み出す。若い選手にも積極的に声をかけ、本来の力を引き出してあげるのも自分の役目と考えるからだ。
「誰もが力を出し合えて、競い合うのがいちばん。自分のためにも、若い人のためにもなるし、それこそチームの力になる」
かねてからコーチの資質のひとつとして、「人を観察する力」と言い続けてきたエディー・ジョーンズHCだ。仙波の日頃の振る舞いも見て、ジャパンに必要な人物と決断したのだろう。
「以前、声をかけてもらったことを覚えています。2009年シーズンのことだったと思うのですが、サントリーとの試合後、僕がスピーチをする機会があったんです。その試合は東芝が負けたけど、思うように話しました。それを聞いていたエディーさんは、オープンマインドを持っていると思ってくれたようなんです」
この合宿でも、初日の雨中練習後に行われたバーベキュー・パーティーで、司会のようなものをやって空気を和ませ、ぎこちなかった選手間の距離を一気に近づけた。チームビルディングの一環として行われた、ポジションごとの飲み会でも、アウトサイドBK陣の盛り上げ役に徹した。
「個々で出来ることには限界がある。だからコミュニケーションを密にとれる集団になって、それぞれが連動して動くチームにならないと。1の力を3にしていく戦い方をしないと、世界とは戦えないと思います」
好漢。30年生きてきたからこその分別は、きっとチームに欠かせぬ武器となる。