大勝した試合にも反省点あり。東福岡・茨木海斗は「個々をしっかり」。
春休みに手応えを掴んだ。
東福岡高は3月下旬、埼玉・熊谷ラグビー場での全国高校選抜大会で準優勝。冬の全国を制した前年度を経てメンバーを大きく入れ替えながらも、伝統的にこだわる1対1のタックルや接点への圧力、陣地を問わず球を振る大胆な攻撃を披露できた。
チームが成長を実感したのは3月29日だ。
前日の國學院久我山との準々決勝では、不完全燃焼に映った。24-13と白星も、攻撃でのミスを重ねた。
それでも当日の準決勝では、大阪の強豪である常翔学園を58-17と圧倒できた。
準々決勝を終えて宿へ帰るや、約3時間ものミーティングをしたのが効いたという。
それが手応えの源となった。
「最初にフルで試合(の映像)を見返して悪いところを全部、あぶり出した後に、FWとBKに分かれて相手のプレーを見て…。やるべきことを、すべて明確にしました。ここで1歩、階段を上がれたと思います」
こう語るのは茨木海斗。身長182センチ、体重110キロの右PRで、強烈な突進、タックルを繰り出す。最前列で組むスクラムでも、「きつい時にペナルティを取るなど、仲間を助けられたら」と力強く押す。
準決勝でも持ち味を発揮した。仲間たちと進歩する感覚を、確かに掴み取れた。
反省も忘れない。
41-17として迎えた、後半16分のことだ。
敵陣中盤でラインブレイクし、トライラインも破った。後ろからは味方のサポートもあったなか、ゆっくりとゴールエリアの中央まで回り込んだ。
ここで追っ手に捕まり、グラウンディングができなかった。
大量リードをしてほぼ勝負をつけていた時間帯だったとはいえ、得点機を逃したのは確か。試合直後のロッカールームでは、その動きがやり玉にあがった。
藤田雄一郎監督が「(前日のミーティングで)コミュニケーションをしっかりしようと言ったのに…」と厳しく注意したのだ。冬の全国大会に向けチームは成長過程にあるため、指揮官はあえて声を大にした。
「トップに立つには、完璧じゃないと。まぁ、半分はパフォーマンスですが」
茨木の述懐。
「自分のプレーで、いい形で終わった試合のミーティングが、台無しになってしまった…。決勝戦では、それを取り返す気持ちがありました」
その「決勝」は、31日にあった。神奈川の桐蔭学園を向こうに、茨木は身体のぶつけ合いで魅した。
両軍は一昨季の選抜大会決勝でも対戦。東福岡が勝っていた。
今年のチームは、今度のファイナルを前に当時の映像を確認。画面の向こうでは、茨木の2つ上の兄で現筑波大の颯がFLとしてプレーしていた。
局地戦を制してスコアを重ねたその試合内容に、弟も触発された。
激しく戦えたのはそのためだ。
「やっぱり、勝つにはブレイクダウン(接点)を圧倒しないといけない」
前半8分までに12-0と先行した。もっとも最後は、19-34と敗れた。
桐蔭学園は昨季、8年ぶりに冬の全国行きを逃し、当時のレギュラーを多く残したまま他校より1か月ほど早く新体制をスタートさせていた。
敗れた茨木はこうだ。
「(意識していた)ブレイクダウンが甘くなってゲインを切られた(突破された)時、相手の攻撃がうまくいくようになった。最後まで戦う、ということができなかったです。個人的にはフィットネス(体力)も、フィジカル(力強さ)も、スクラムも、桐蔭学園に劣っている部分が多かった。もっと強化していきたいです」
通称「ヒガシ」は自主性を貴ぶ。
ウォームアップ、個人練習では、それぞれにとって必要な種目を各自が考えておこなう。
さらに今季のスローガンは「彩」。送り仮名をつければいろどる、と読める。各自が個性を発揮し、今年ならではの集団を作るのが狙いだ。茨木はこう見る。
「個々をしっかりしてからこそ、チームがある。その個々を、自分たちで作り上げていけるのが(東福岡の)素晴らしい点です」
桐蔭学園のようなライバルに勝つのに何が必要かは、3月までにわかった。それを自力で獲得すべく、4月以降の練習を見つめ直す。