FBホームズが23得点。NZ女子『スーパーラグビー・アウピキ』を制したのはマタトゥ
ニュージーランド(以下、NZ)の女子によるスーパーラグビー『スーパーラグビー ・アウピキ』の決勝が3月25日にハミルトンにあるFMGスタジアム・ワイカトでおこなわれ、マタトゥが昨年の覇者チーフスを33-31で破り初めての優勝を勝ち取った。
『スーパーラグビー・アウピキ』 は、今年で2シーズン目となる。
“アウピキ“ の意味が、「最上位の領域への上り坂」とあるように、NZ国内選手権レベルとブラックファーンズ(女子NZ代表)の間の重要な位置づけとして昨年から開催が実現した。
北島からは、ブルーズ・ウィメン、チーフス・マナワ、ハリケーンズ・ポルアの3チーム。南島からは、クルセイダーズとハイランダーズの連合チームのマタトゥが参加し、合計4チームで頂点を争った。
5週間にわたり開催され、各チーム総当たり戦のあと、準決勝、決勝のプレーオフが実施された。
2位のマタトゥが、3位・ブルーズの猛烈な追い上げをかわして26-23と競り勝った準決勝。
もう一つの準決勝は、唯一負けなしで1位通過のチーフスが強さを見せつけた。4位のハリケーンズ相手に43-21のダブルルスコアだった。
チーフスとマタトゥが進出したファイナルの舞台。両チームが気持ちのこもった「ハカ」を終え、キックオフの笛が鳴った。
序盤は、チーフスが主導権を握った。安定感抜群のセットピース(スクラム、ラインアウト)を武器に相手にプレッシャーをかけた。昨年のワールドカップでは本来の力を発揮できなかった、PRターニャ・カルーニヴァルがパワーを活かして2トライを挙げる。
チームは3トライを奪い、前半20分で19を先行した。チーフスが圧勝するかのような序盤戦だった。
しかし、やがてマタトゥも息を吹き返した。20分過ぎたあたり、PRエイミー・ルルーがトライ。その後、CTBエイミー・デュ・プレッシーのラインブレイクからチャンスを作り、FBのレニー・ホームズがインゴールに入った。
勢いに乗ったマタトゥは、WTBマーサー・マタエレもインターセプトからトライを挙げる。僅か10分間で3トライを挙げて逆転に成功した(22−19)。
それでも、前半をリードしたのはチーフスだった。
流れが完全に変わったかに見えたが、スクラムからBKの見事なサインプレーでWTBメレランギ・ポールがトライを奪い再逆転したのだ。
前半だけでおなかいっぱいとなる見ごたえのある試合は、26−22とチーフスのリードで折り返した。
▼ゲームコントロールでマタトゥが上回る。
ラスト40分も拮抗した展開となった。
マタトゥは、後半に入り苦戦していたラインアウト修正。ボール支配率も良くなり、試合を優勢に進められるようになった。
FBホームズがこの日2つ目のトライで27−26と再逆転。さらに、背番号15は2PGも決める。33-26とセーフティーリードへ持ち込んだ。
しかし、昨年の覇者チーフスも意地を見せる。ラインアウトから得意のドライビングモールでHOルカ・コーナーがインゴールになだれ込む。残り時間2分で2点差に迫った。
33-31とマタトゥリードで迎えたロスタイム。チーフスは逆転を狙い、自陣22メートルラインから果敢に攻めた。ミスが起こればそのまま試合が終わる状況だ。
チーフスの選手たちは素晴らしいスキルを見せた。ボールを繋ぎ、敵陣22メートルライン付近まで持ち込んだ。
一進一退の攻防。目が離せない。
そんな中で、マタトゥが痛恨の反則を犯した。
チーフスの誰もがPGを指示する。マタトゥの選手は、終わったと思うような表情だった。
チーフスのキッカーは15番、テニカ・ウイルソン。右中間のさほど難しい位置ではないアングルから、逆転サヨナラをかけたPGを蹴った。
しかし、僅かに右にそれる……。その瞬間、マタトゥの優勝が決まった。
歓声を上げ抱き合って喜ぶマタトゥの選手たち。
PGを外したウィルソンは、ショックを隠せない表情だった。
昨年のワールドカップ(以下、W杯)準決勝、ブラックファーンズ ×フランスのラストシーンと重なって見えた。
後半のチーフスには前半の勢いが見られなかった。反則やエラーの数が増えた。それが試合に影響し、連覇は叶わなかった。
マタトゥは前半20分で0-19とリードされながら、見事なゲームをコントロールを見せて勝利を引き寄せた。昨年のW杯後に引退したケンドラ・コックセッジを欠きながらの優勝。価値ある栄冠となった。
▼昨年のワールドカップを制した代表勢の活躍。
FBホームズの活躍は、大きな勝因となった。マタトゥの33点中23点を稼いだ(2トライ、2ゴール、3PG)。
昨年のW杯でもキックを中心に活躍していたホームズは、キックの飛距離も伸び、精度も増した。ゴールキックは40メートル級もあれば、タッチライン際からでも決める程に。あまり得意としていなかったランプレーも成長している。
CTBデュ・プレッシーも攻守にわたり活躍した。ブラックファーンズのFW勢も、代表で得たスキルを継続して見せた。
昨年のW杯経験者が、マタトゥのレベルを上げたと言えるだろう。
今年の大会は、サラ・ヒリニ、ポシャー・ウッドマンなどのスター選手の多くがセブンス代表活動参加のため不在だった。しかし、それにもかかわらず昨年よりレベルの高いラグビーが見られた。
昨年のW杯で世界一となった代表選手のレベルの高さは言うまでもないが、その他の選手のレベルも上がり、NZの女子ラグビーの底力を見せてくれた気がする。
今後もNZの女子ラグビーから目が離せない。