103失点の翌日にエナジー全開。函館ラ・サール高の選抜大会に出る「意義」
0-103。会場の埼玉・熊谷ラグビー場で、厳しい現実に直面した。
函館ラ・サール高のラグビー部は、3月25日にあった全国選抜大会の1回戦で大阪の常翔学園高に敗れた。
2大会ぶり5回目となった今度の舞台にあって、冬の全国で5度優勝の強豪に大量失点を喫したのだ。
気落ちしてもおかしくなさそうだったが、「負けたことは悔しいですが、いい経験ができた部分が大きかったです」と中西海斗主将。収穫と課題を明確に洗い出す。
「身体づくりはしないとな、と感じました。ただ、ディフェンスのシステム自体はそんなに悪くなかった」
宇佐見純平監督は、「絶対、自分たちが発信できることはある。(出場する)32チーム中32位の実力かもしれないけど、スピリットだけは消さない」。爪痕を残すチャンスは、残っている。26日には敗者戦があり、函館ラ・サールは東京と戦うことになった。
中西はうなずく。
「しっかり上がって(相手と間合いを詰めて)、タックルしようと、昨日の夜のミーティングで話しました。僕らは小さいチーム。相手の学校の方が大きいのですが、気持ちでは絶対に負けない」
その日の朝、指揮官はコベルコ神戸スティーラーズのラファエレ ティモシーからメッセージもらった。
2019年のワールドカップ日本大会の日本代表だったラファエレとは、当時の部員が同選手の著書の感想を本人のSNSに送ってからの縁だ。
大阪・東大阪市花園ラグビー場での冬の全国へ出た2020年度には、灘浜にあるスティーラーズのグラウンドで一緒に練習したこともある。
函館ラ・サール高が北海道有数の進学校であるのを踏まえ、宇佐見は決意する。
「強いチームではないです。では、僕らが(全国レベルの舞台に)出る意義って何? 僕らみたいなチームがあってもいいよな? ずーっと、選手には言っています。勉強とラグビーを頑張る普通の高校生がひたむきに頑張る姿を見せれば、何か、届けられる」
大雨に見舞われた。試合を通して目立ったのは、函館ラ・サール高の絶叫だった。自陣で相手に刺さる。落球を誘う。そのたびに選手は大声で称え合った。宇佐美は笑った。
「僕らはずっと、雪の上のようなしんどい状況で練習している。この、雨の状況を楽しめた。燃えられた」
キックで陣地を奪って反則を誘っては、スコアを重ねる。ミスボールを拾い上げてのトライも決め、20-10でノーサイドを迎えた。宇佐見監督は言った。
「泥臭いですけど気持ちの入った、うちらしくていい試合だった」
主将の中西がラグビーを始めたのは、付属の函館ラ・サール中から。当時のクラブの先輩たちが「楽しそう」に楕円球を追いかけていたからだ。
ぶつかり合うスポーツへの挑戦を両親は応援してくれ、やがて弟の琉斗も入部した。きょうだいはいま、FLのレギュラー同士でプレーする。
兄は言う。
「ディフェンスが好き。表現しにくいのですが、我慢して、我慢して勝つ、粘って、粘って勝つ、というのが好きです」
選抜大会の最終戦では、函館ラ・サールらしい選手が、函館ラ・サールらしい勝利に喜んだわけだ。
ここからは見据えるのは花園行きだ。留学生を擁する札幌山の手高、昨季の花園に出た立命館慶祥高などと、南北海道代表の座を争う。
主将が「粘り勝って、花園に出場できるようにしたいです。力が十分に発揮されれば、行けるのではと思っています」と述べるなか、指揮官は視野を広げる。
「北海道全体で強くなっていく。しびれる試合をいくつできるかが重要です。今年はどっちが勝つかわからないね、という試合を毎年、やっていければ」
互いに切磋琢磨する流れで、函館ラ・サールらしさを色濃くする。