日本代表 2022.10.27

「一試合、一試合が大切」。日本代表最年長の山中亮平、蹴り合いで献身。

[ 向 風見也 ]
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「一試合、一試合が大切」。日本代表最年長の山中亮平、蹴り合いで献身。
オールブラックス戦も15番をつけて先発する山中亮平(撮影:毛受亮介)


 日本代表にあってチーム最年長の34歳。山中亮平は、年齢を重ねてもなお躍動する。

「勝ち切れた! …って感じですね」

 ロッカールームを引き上げてこう語ったのは、10月14日の大阪・ヨドコウ桜スタジアムでのこと。この夜は「JAPAN XV」名義でオーストラリアAとの3連戦3試合目にぶつかり、52-48と競り勝った。

 このシリーズはそれまで22-34、21-22と連敗していた。最終戦でも大きくリードを奪った後に反則とエラーを重ね追い上げられたものの、「勝ち切れた」ことに安堵していた。

「一試合、一試合、出た課題をしっかり修正して、準備をしっかりすることにフォーカスしながらやっていました。時間帯によって流れが変わるなかでも、勝ち切れたのがよかったと思います」

 グラウンド最後尾のFBで先発していた。前半3分には、味方のオフロードパスをドリブルするような形から先制トライを奪った。何より、陣地の奪い合いで活躍した。

 持ち味のロングキックは圧巻。かねて「ボールを持っていない時のハードワーク」を重視しているとあり、味方のキックを追うチェイスでも光った。

 終盤に差し掛かった後半29分頃には、一連の流れで妙技を重ねる。

 まず、高い弾道のボールを相手と競り合いながらもキャッチ。近くにいた味方SOの山沢拓也が敵陣の深い位置へキックを放てば、山中はその場にとどまって相手が蹴ってくるのを待つ。

 対するオーストラリアAが実際にキックを選択すると、自陣22メートルエリアまで下がって球を迎える。一瞬、ボールをファンブルしかけながらも、最後は余裕を持って敵陣中盤まで打ち返した。危険水域を脱した。

「今日も調子よく、蹴れた。キックの使い方はジャパンがやろう(重視しよう)としているところ。相手によってプランが変わるところもありますけど、(蹴る弾道は)ハイボール、ロングキックとうまく使い分けながらやっています」

 身長188センチ、体重98キロ。かねて世代有数の大型SOとして名を馳せてきた。しかし、早大卒業後の2011年春からの2年間は選手資格の停止処分を受けた。競技に戻ってから迎えた2015年のワールドカップ・イングランド大会でも、惜しくも日本代表入りを逃した。

 潮目が変わったのは2018年以降か。

 所属するコベルコ神戸スティーラーズ(現名称)で、FBの位置へ本格的に挑戦した。

 すると日本代表のジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチに、空中戦とキックでの強みが買われた。2019年のワールドカップ日本大会でも代表入りし、この国初の8強入りに喜んだ。ジョセフ体制を継続させる現代表でも、野口竜司ら年下のFBとの定位置争いをリードしている。

 目指すは、2023年のワールドカップ・フランス大会出場である。

 今年に入って決意を明かす。

「大会は来年。一日、一日、無駄にできない。一試合、一試合が自分にとっても、チームにとっても大切になる」

 10月29日には東京・国立競技場で、「オールブラックス」ことニュージーランド代表とぶつかる。ワールドカップ3度優勝の強豪を前に、この日もスターターとして存在感を示す。

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