日本代表 2022.10.04

ワーナー・ディアンズ、緊急登板に応える「ワークレート」を発揮。

[ 向 風見也 ]
ワーナー・ディアンズ、緊急登板に応える「ワークレート」を発揮。
オーストラリアA戦でキックチャージに向かうJAPAN XVのワーナー・ディアンズ(撮影:松本かおり)


 出番は突然、訪れた。ワーナー・ディアンズは冷静だった。

「いつも通り、リザーブプレーヤーとしてチームにインパクトを出せるように、フィールドに入ったっす」

 今秋の日本代表メンバーに名を連ねていた20歳の大器は、10月1日、東京・秩父宮ラグビー場で「JAPAN XV」の19番をつけた。

 今後のテストマッチ、さらには来年のワールドカップへ向けた試金石となる、オーストラリアAとの強化試合に前半7分から急遽、出場した。同じLOの位置で先発のサナイラ・ワクァが、けがで退いたためだ。

 果たしてディアンズは、「いつも通り」の心で活躍した。

 身長201センチ、体重117キロの巨躯を、チームが求める守備での「ダブルコリジョン」で活かす。仲間と2人1組で鋭く前に出て、走者の外側、もしくは正面のコースを抑えて刺さる。

「チームのディフェンスは、かなりよかった」

 攻めでも光った。接点周辺のユニットを組み、パスをもらって首尾よく前進する。

 前半35分頃、敵陣10メートル線付近中央。まずSHの齋藤直人からパスを受けたのは、HOの坂手淳史主将だった。三角形のユニットで先頭に入っていた。

 坂手が右側へゴールラインとほぼ平行に球を放ると、その弾道へディアンズが走り込む。ディアンズはもともと、三角形の右下辺に位置していた。ボールを手にする前に繰り出したのは、持ち前の技巧である。

 右、左とステップを踏むことで、パスをつかんだ瞬間、目の前に2人いたタックラーの間を射抜けた。グラウンド中盤まで前進。攻めにテンポを生んだ。

 フットワークのスキルで、生来のパワーを最大化させたのだ。

「相手タックラー2人に対してボールキャリー(突進役)が俺1人だったら、インパクトは負けると思う。だから、うまく(防御の正面から身体を)ずらして、スペースに行くことに集中する。(2人いるうちの1人をかわして)1対1を作れるようにフォーカスしています」

 ちなみにここでの連続攻撃は、38分、オーストラリアAの反則を誘った。SOの中尾隼太がペナルティキックを決め、9-6と勝ち越した。

 それまでの間、ディアンズはもう1度、パスをもらっている。22メートル線付近中央で防御網にぶつかり、当たり勝ち、相手側に倒れながら味方側へボールを置いた。

「自分の身体を使って、フィジカルバトルで勝ちたい」

 ニュージーランド出身。千葉県の中学校を卒業後、180センチ台だった身長を一気に伸ばした。流経大柏高を出た2021年、大学を経ずに現・東芝ブレイブルーパス東京に入った。

「あまり勉強が得意じゃなかったから、大学にはあまり行きたくないなぁと。ラグビーのレベル、自分のキャリアのことも考えて(いまの道に進んだ)」

 国内きっての期待の星だ。代表戦デビューを果たしたのは、まだプロ選手としての初陣に立っていない昨秋のこと。国内リーグワンを経験して迎えた今夏は、日本代表の対フランス代表2連戦に出た。世界のトップクラスを肌で感じた。

 スター選手への階段を順調に駆け上がるディアンズは、「まだ経験も浅い、若い人」と自覚。通算3度目の招集となった今度の代表活動でも、謙虚に定位置確保を目指す。重きを置くのは、「ワークレート」の向上だと話す。いいプレーを連続してできるようになれば、自ずと目標を達成できそうだ。

 9月上旬からの候補合宿では、高強度な実戦練習を繰り返した。こう胸を張る。

「80分(試合を通して)戦える体力をつける練習をしてきた」

 ツアー初戦となったこの夜も、フォーカスポイントに倣って攻守に動き回った。チームは終盤に連続失点を喫して22-34と敗れたが、ディアンズ自身は確かな爪痕を残したか。

 8日に福岡・ベスト電器スタジアムである同カードに向け、いまはキャンプ地の宮崎に戻っている。

PICK UP