日本代表定着へ勝負の梶村祐介、イーグルス新主将として新境地へ。
勝負の12か月間に挑む。この秋に活動するラグビー日本代表の41名に選ばれた梶村祐介は、所属する横浜キヤノンイーグルスでも重責を担う。移籍2季目にして、主将に就任したのだ。
まずは日本代表選手の一員として、来年9月開幕のワールドカップ・フランス大会での代表入りへの思いを聞かれる。「チャンスはある。ただ、まずは秋のツアーをしっかりやりたい」と地に足をつける。
本番からほぼ丸1年前にあたる9月6日。別府での候補合宿中に語った。
「このキャンプに合わせて、いい準備はできたかなと思います。離脱してから、ずっとトレーニングしてきたので、コンディションはいいです」
6月から約1か月間、参加した代表活動では、不完全燃焼に終わったか。本人の言葉が匂わせる通り、7月の対フランス代表2連戦は体調不良で欠場。渦中、チームからの「離脱」を余儀なくされていた。
何より、自身にとって約3年半ぶりのテストマッチとなった6月25日のウルグアイ代表戦でも、決して満足できなかった(福岡・ミクニワールドスタジアム北九州)。注力するスピードトレーニングの成果を発揮して43-7で勝利も、ジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチからの評価は甘くなかったという。
「いい部分もあったけど、厳しい部分も多くありました。いまのラグビーで多く使うキックの精度、それほど悪くはなかったディフェンス…。あらゆる面においてもう1、2段階レベルを上げて欲しいと言われました」
梶村が目指すインサイドCTBのポジションは、中村亮土の定位置である。ワールドカップ日本大会で防御ラインの統率とタックルを披露した中村は、昨秋のツアーでは副将を担うほどチーム内での存在感は強い。
その中村は秋から代表復帰。10月1日以降に「JAPAN XV」名義でおこなうオーストラリアAとの3連戦、同月29日以降のニュージーランド代表、イングランド代表、フランス代表とのテストマッチに向け、定位置争いは激しさを増すだろう。
ツアー中に戦列へ戻りそうな中村より4歳下の梶村は、己に言い聞かせる。
「全員が(試合に出る)経験を得られるわけではない。それまでに(練習で)アピールして、試合に出るチャンスをつかみたいです」
身長181センチ、体重95キロの27歳。報徳学園高時代から日本代表の練習生となり、明大を経て2018年に入った現・東京サントリーサンゴリアスでは1年目から活躍した。しかし、その時期に参加できた日本代表では控えに甘んじた。
この時、梶村の位置で先発機会を得ていたのは同じサンゴリアスの中村だった。
所属先でのポジション争いでは梶村が優勢気味だったものの、ナショナルチームでの構図はその通りにならなかった。
ワールドカップ日本大会では、中村が8強入りする日本代表の主力となった。一方で梶村は、大会前の選考合宿でメンバーから漏れた。
ワールドカップ後に初めて成立した国内トップリーグの2021年シーズンでは、中村が準優勝するチームの主将だった。その折、梶村は出番を得られず、移籍を決めた。イーグルスでは出場機会が担保されたことで、パフォーマンスの浮き沈みを穏やかにできた。その先にあったのが、今夏の日本代表復帰だった。
イーグルスに移ったことで、日本代表入りへの挑戦権を得た格好の梶村。今度はそのイーグルスでも、新たな成長機会が与えられそうだ。
梶村をイーグルスの新主将にしたのは、監督の沢木敬介だ。
2016年度にサンゴリアスの指揮官となり、2シーズン連続の日本一を達成。辞任前最後のシーズンにあたる2018年、ルーキーだった梶村をレギュラーに抜擢していた。かつて務めていた20歳以下日本代表のヘッドコーチ時代から、梶村の才能を買っていた。
現職に就いたのは2020年だ。
昨季までの2年間は、ワールドカップ日本大会の日本代表で司令塔だった田村優に主将を任せた。着任前最後のトップリーグで16チーム中12位だったチームを、一昨季のうちに8強へ引き上げた。リーグワン元年にあたる昨季は12チーム中6位と、一時はクラブ史上初の全国4強入りに迫った。
今回の主将変更は、チーム、田村、梶村それぞれの発展を促すものだと説明する。
「いちばん、最初に来た時(就任時)は、チームをガラッと変えるために優のリーダーシップが必要だった。次は、優も優で自分のパフォーマンスにチャレンジしなきゃいけないし、(チームも)違うリーダーで次のステージにいかなきゃいけない。カジも、プレイヤー的に次のステージへ行かなきゃいけない。主将をやることで、それが見えてくる」
ちなみに主将を支える副将はあえて立てず、各部門のリーダーを「6人」ほど設置。各人が周りの仲間の成長に深く関わることで、チームの課題である選手層を改善したい。
「リーダーが俺らコーチングスタッフとつながりながらチームをリードしていく…。そういうのが、選手層にもつながってくると思う」
梶村は、選手への要求水準の厳しさで知られる沢木を師と仰ぐ。まずは今度の日本代表活動で、「できる限りの試合に出場し、選手としての深み的なところを引き出していきたいです」。その心は。
「これまではランニングに頼ってきたところがあるのですが、ゲームを理解する部分(の質を上げ)、10番(司令塔のSO)をサポートできるようになりたいです」
自らの存在を首尾よくアピールし、充実した心持ちで12月中旬からの国内シーズンに突入したい。