日本代表 2022.07.18

成長したのはフランス代表? 日本代表リーチ マイケルの「7.9」

[ 向 風見也 ]
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成長したのはフランス代表? 日本代表リーチ マイケルの「7.9」
国立競技場でのフランス戦でラインアウトボールをキャッチするリーチ マイケル(Photo: Getty Images)


 ラグビー日本代表のリーチ マイケルが話をしたのは7月9日。東京・国立競技場でのフランス代表戦を、15-20で落とした直後だ。

「もちろん、負けて悔しいです。ティア1(伝統的な強豪国)相手にもいい準備をしていたので。ただ、そのなかでトライを獲るまでには行ったので、チームとしては自信を持って帰れる」

 6月3日からの代表活動で、テストマッチの戦績を2勝2敗とした。フランス代表に挑む前には、ウルグアイ代表と2試合、おこなった。

 18日の初戦では、予備軍のナショナル・デベロップメント・スコッドが軸となって挑んで34-15で勝利(東京・秩父宮ラグビー場)。続く25日にはリーチら代表本隊が福岡・ミクニワールドスタジアム北九州に立って43-7と快勝できた。

 7月2日のフランス代表との初戦を23-42で落とした(愛知・豊田スタジアム)。中盤以降に苦しんだためだ。

 しかしこの日は、試合終了10分前まではリードしていた。

 特に15-7とリードできた前半の12分には、相手キックの捕球から組織的に攻めてスコアしていた。

 さらに40分にも、蹴った後の防御で相手のミスを誘うや組織的に攻めた。ここではリーチも絡んだ。左端で抜け出した味方を援護し、最後はこの日2トライの山中亮平へラストパスを送った。

 初戦に続いてボール保持を重視しながら、適宜、キックの選択肢を視野に入れていた。エネルギーを保つべく、攻め続けるか、蹴るかのバランスを取っていた。

 前半の2つのトライシーンを、リーチは「理想的ですね」と振り返る。

「蹴って、蹴って、蹴ってと繰り返して、チャンスの時に…対フランス代表だけではなく、ジャパンの目指すアタックです。(相手に)蹴られたボールをバランス考えながら(動かす)。継続する時には継続して4~5フェーズ、重ねられればどこかにスペース、(もしくは)キックスペースもできる」

 しかし、反省も忘れない。最高気温31度という暑さ、対するフランス代表の接点での激しさに苦しめられ、最後は敗れたからだ。

「ボールも滑ったし、ブレイクダウン(接点)でもプレッシャーがかかった。どれだけボールを大事にし、継続するかが日本代表の鍵だと思う。崩して、崩してからスペースが生まれる。だから、それ(いかに球を保持し続けられるか)が一番、治さなきゃいけないところだと思います」

 勝ち越されたのは、15-13と2点リードで迎えた後半31分。自陣中盤の相手ボールスクラムの左脇を、対するSHのバティスト・クイユーに走られる。

 FLで先発のリーチはその折、スクラムの最後列左で塊に巻き込まれていた。同僚SHの茂野海人は、クイユーのランコースよりもさらに左へ回り込んでいた。フランス代表にスペースを与えてしまっていた。リーチの述懐。

「難しいディフェンスでした」

 果たして、世界ランクでは向こうの1位に対して10位と差をつけられた。
 
「(ミスの発生から)ちょっとナーバスになったりした。それも、テストマッチ。次に集まった時には、たぶんチームで(敗戦から)何を学べたかを話し合う。そこで成長できたらいいなと思います。この経験を、プラスにしないといけない」

 チームはいったん、解散し、9月上旬に大規模な候補合宿を実施予定。11月にはイングランド代表、フランス代表といった強豪国とテストマッチをおこなう見込みだ。さらに先に見据えるのは、2023年のワールドカップ・フランス大会である。

 現在33歳のリーチは、4年に一度のワールドカップへ3大会連続で出場中。2015年のイングランド大会からは2度続けて主将を任され、9戦7勝と結果を残している。列島に勝者の文化を植え付けた1人は、こうも言及する。

「この負けに満足しない。いい試合で終わる昔の日本代表の悪い癖が戻らないように、ちょっとしたブレイクで身体を仕上げ、秋の大一番に勝てるよう意識したい」
 
 ちなみに日本代表とフランス代表とのカードと言えば、2017年11月25日のナンテール・Uアリーナでの一戦が挙げられる。23-23のドローだった。当時も出場していたリーチは、今度の国立で「約5年前の対戦時と比べ、何が成長したか」と聞かれる。

 答えに客観性が帯びていたのが、印象的だった。

 その頃のフランス代表は現在と違って低迷期にあったとあり、リーチはこう説いたのだ。

「僕らも成長している。ただ、一番、成長しているのはフランス代表です。当時のフランス代表は連敗していた時でした。(日本代表には)その時も、今回も勝てたら…と悔しい思いがある。秋にもう一回、向こうのホームでできるチャンスがある。成長した手応えを見せたいです」

 再戦は11月20日、スタジアム・ド・トゥールーズで繰り広げられる。

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