急遽の「80分」で再三披露。日本代表テビタ・タタフが得意のジャッカルを解説。
アピールに成功したひとりだろう。今年5月、日本代表の予備軍にあたるナショナル・デベロップメント・スコッド(NDS)に配属されたテビタ・タタフは、6月11日、東京・秩父宮ラグビー場で異彩を放った。
この日は、NDSからなる「エマージング ブロッサムズ」のNO8で先発。母国トンガにルーツを持った選手たちによる「トンガサムライXV」との慈善試合で、フル出場を果たした。
「相手にトンガが…。こういう試合があるのが嬉しかったです。本当に、楽しいです。自分の強みをぶつけていきました」
公式で「身長183センチ、体重124キロ」の26歳だ。
東京サントリーサンゴリアスに加入3年目にあたる昨年、東海大2年時以来となる日本代表復帰を果たしていた。途中出場で持ち前のパワーを示す。
しかし、国内リーグワンのシーズンを経て決まった今夏は、宮崎で動く日本代表ではなく大分でのNDSに加わることになった。
件の慈善試合を含む2つのゲームのパフォーマンス次第で、25日以降に3つのテストマッチをおこなう「本隊」へ加われる立場だ。
本人はこうだ。
「大分に行くのはいいチャンスだと思います。ここで自分のスキル、フィットネスを上げて、宮崎(日本代表)のほうに入れるようにしていきたいです」
NDSの堀川隆延ヘッドコーチは、「ジェイミー(・ジョセフ日本代表ヘッドコーチ)とも話をしているなか、もともと(タタフは)『ゲームタイムが必要』と言われていた選手のひとりでした」と補足。その意味で今度の一戦では、タタフに好機が巡ってきたと言える。
本来、NO8のスターターだったセル ホゼが、「家庭の事情」で急遽、欠場。リザーブの予定だったタタフが、指揮官に「80分、いけるか?」と打診された。二つ返事だった。
「(課題は)自分のフィットネス。きょうは80分のなかでとれくらい走れるのか、パフォーマンスできるのかを意識しました」
役割は果たした。
グラウンドの端側、もしくはスクラムの最後尾で球を得れば、持ち前の推進力を発揮する。後半34分には、敵陣22メートル線付近右でのラインアウトから球を受けるや快走。3人のタックラーを振り切り、4人目は身体の軸回転によりかわす。最後は勢いで寄り切る形で、チーム5つ目のトライを奪った。
SOの田村優主将は言う。
「能力があるのは間違いなくて、必要とされれば力を出す性格の選手だとわかっていた。もっと、すごくなると思います。彼は使われてどんどん成長していくと思うので、きょう、一緒に試合ができてよかったです」
何より際立ったのは、かねて得意のジャッカルだ。
前半15分頃には、ハーフ線付近左から味方がハイパントを蹴ると、その弾道を追うチェイスラインに入ったタタフが敵陣22メートル線上左でターンオーバーを決める。
互いに疲れのたまった後半28分頃にも、起死回生の一手を繰り出す。
向こうのSOのレメキ ロマノ ラヴァのビッグゲインなどで自陣22メートルエリアまで迫られるも、右中間の接点へタタフが腕を差し込む。攻守逆転。対する赤いジャージィが雪崩のように迫り来るも、白黒のジャージィをまとったタタフは動じなかった。向こうの反則を誘った。
「相手のボールを獲ったり、(テンポを)遅くさせたりするのは自分の強みのひとつです」
31-12で勝利後、タタフはジャッカルの肝を語る。
「先に(味方の)タックラーを行かせて、その後ろ(に先回りして)から、相手のキャリーが倒れるのを狙う」
18日、秩父宮。ウルグアイ代表とのテストマッチ(代表戦)がある。NDSが日本代表と銘打つこの一戦でも、タタフは8番をつける。怪力と感性を混ぜ合わせたジャッカルで、昇格の権利をつかみ取るか。