車いすラグビー日本代表「今年のゴールは世界選手権連覇」
桜の開花に胸躍らせ、それぞれのサクラに想いを馳せる春。
日本代表の誇りを胸に、桜のジャージで世界に挑む車いすラグビー日本代表候補選手たちは、大輪の花を咲かせるため奮起している——。
3月21日、強化合宿を終えた車いすラグビー日本代表のケビン・オアーヘッドコーチ(以下、HC)と日本代表候補選手がオンライン取材に応じ、現在の状況や目標について語った。
東京パラリンピック以降、5回目となった今合宿にはパラリンピック出場組を含むフルメンバーが参加。今年10月にデンマークで開催される世界選手権に向けて強化がおこなわれるなか、実戦形式のトレーニングに多くの時間が割かれた。
パラリンピック銅メダルの悔しさを胸に、代表活動からしばらく離れ自分を見つめ直したという池崎大輔は「強度の高い練習の中で、各選手が次の目標に向かって合宿に臨んでいるのがプレーから感じられた」と今合宿を振り返り、仲間の志しの高さや若手選手の成長に刺激を受けたと話す。
車いすラグビーの世界選手権は4年に一度行われ、前回の2018年大会で日本は金メダルを獲得。史上初の世界チャンピオンに輝き、世界の強豪国としての地位を確立させた。
通常であればパラリンピックの2年後に世界選手権が行われるが、東京2020大会の1年延期により世界選手権までの準備期間は1年。
ケビン・オアーHCは「若手選手の育成と世界選手権への強化を同時に進めなければならない難しい1年」と語るが、「今年のゴールは世界選手権の連覇」と目標は明確だ。
今回の合宿では「“アイスクリームCUP”と名付けたトーナメントを開催した」とケビンHC。
4つのチームに分かれ、アイスクリーム(※ケビンHCが自腹で購入)をかけた熱いゲームが繰り広げられた。
そこで優勝したのが、次世代エース候補の橋本勝也と白川楓也を擁する若手チームだった。
チーム最年少の19歳で東京パラリンピックの舞台に立った橋本は「もっともっと上を目指し、世界を相手に戦えるプレーヤーになりたい」と東京大会後にトレーニングメニューを大きく変えたという。
サーキットトレーニングなど有酸素運動のほか、車いす操作や体の動きの細部にまでこだわり技術に磨きをかけている。
合宿中には、世界トップレベルの「ハイポインター(障がいの比較的軽い選手)」である池透暢や島川慎一、池崎大輔を相手に1対1で勝負をしかけ抜き去るシーンもあったといい、地道に積み重ねている努力は少しずつ実り始めている。
「レベルアップしていく中でまだまだ自分に期待できる部分がある」
橋本の向上心は留まることを知らない。
そして、白川は障がいの程度によって分けられる7つのクラスのうち中間にあたる「ミッドポインター」と呼ばれる選手。
体操選手だった白川は受傷後、池崎に声をかけられ5年前に車いすラグビーへと転向した。
体操で培った可動域の広さと持ち前のリーチの長さを生かしたパスを強みとしており、今後の日本に必要な選手のひとりだ。
東京パラリンピック代表入りを逃した白川は、悔しい気持ちでテレビに映る日本代表の試合を見たといい、「僕もあの舞台に立ちたい」という思いが強くなったと話す。
昨年末からは拠点を地元・北海道から池のいる高知へと移し、池とともにトレーニングに励んでいる。
「世界選手権の代表メンバーに入れるようにがんばりたい」
目標達成に向けて、今後はさらにパワー系のトレーニングを増やしてくと意気込みを語った。
世界に目を向けると、先月開催されたヨーロッパ選手権や今月初めのアメリカ選手権では、新たな選手、とりわけ女子選手の起用など、各国、積極的なチャレンジをしている。
日本はこの勢いに押されることなく果敢に挑む姿勢だ。
ディフェンディングチャンピオンとして臨む世界選手権、目指すは「連覇」。
車いすラグビー日本代表は6月にカナダで開催される国際大会(カナダカップ)に出場予定で、海外遠征としては2019年9月のアジアオセアニア選手権以来、実に2年9か月ぶりとなる。
日本代表キャプテンの池はカナダカップについて、「まだ僕らは“新しい日本の色”を見つけられていない。カナダカップで新しい色がどのように見えてくるのか、すごく楽しみです」と声を弾ませた。
世界の強豪チームが集うカナダカップは、世界選手権の前哨戦となる大会だ。
パラリンピック後初の国際試合で日本はどんな色を見せるのか、車いすラグビー日本代表の新たな戦いに胸が高鳴る。