「コロナは言い訳にできない」。サンゴリアスに大敗の神戸で光る李承信の実行力。
17-56。
コベルコ神戸スティーラーズのデーブ・ディロンHCは試合後、打ちのめされた気持ちをこう表現した。
「非常に残念な結果になりました。すごくつらい気持ちが直で当たっている状態です」
3月4日、金曜日のナイターゲーム。スティーラーズは秩父宮で東京サントリーサンゴリアスと対戦、8トライを奪われて大敗した。
「サントリーさんが何も与えないというか、本当に全力で潰しにきた。すごくいいチームでした」(同HC)
スティーラーズは戦前、コロナに悩まされた。2月中旬から部内にウイルスが蔓延。18日にはチーム活動がストップし、19日のトヨタヴェルブリッツ戦、26日のNTTドコモレッドハリケーンズ大阪戦を欠場した。
約10日の休止期間を経て、活動が再開されたのは27日の日曜日。わずか5日間の準備で大敵・サンゴリアスに挑まなければならなかった。
先発のラインナップを見ても厳しい状況は伝わった。本職が左プロップの山本幸輝は3番で先発していた。ディロンHCは「本来はプレーしないポジションで、何度言っても言い切れないくらい良い働きをしてくれた」と称えた上で、「ケガ人の状態やコロナの対応で答えを絞り出した結果、(山本を)3番に置く判断になりました」と説明した。
WTBアタアタ・モエアキオラが胸中を語る。
「全然練習できてなくて、1か月ぶりの試合で難しいのは分かっていた。けど、それをみんなで言い訳したくなくて、今日はお互いを信頼して頑張っていこうと話して臨みました。でもなかなか難しかったです」
前半11分にモールで先制トライこそ挙げるも、以降は厳しい展開が続く。守っては相手のFBダミアン・マッケンジー、SO田村煕らにスペースに運ばれ、外側にいる強くて速いランナーの突破を許す。
ボールを保持してもハンドリングエラーやパスミスに終わり、ゲームを通してコミュニケーション不足が目立った。観客から思わず漏れる落胆の声量がトライの歓喜を上回るほどだった。
ディロンHCは「コロナは言い訳にはなりません」と話すも、「2、3週間まとまって練習ができなかったのでタイミングのズレだったり、ブレイクダウンにもう一人エクストラで人数をかけなければいけなかったことで、シェイプが崩れてしまったりと、そうした合っていない部分があったと思います」とそのウイルスの影響を認めざるを得なかった。
大敗の中にも一縷の光はあった。李承信の活躍だ。
李は後半5分にCTB リチャード・バックマンに代わり登場。この時点でスコアは5-35まで開いていたから、「出し惜しみせずにチャレンジしようと思っていました」。
防戦一方の展開をベンチから冷静に見つめ、実行に移した。
「外にスペースがすごくあって、そこに運ぶ過程の中でミスがありました。自分が入った時はより実直なCTBとして、もう少し外とクリアなコミュニケーションを取って、積極的に外にボールを動かそうと思っていました」
言葉通り、スキルの高いオフロードパスや際のパスを連発し、味方の好ランにつなげる。30分にはWTBアタアタのトライを長いパスでアシストした。自らのランでラインブレイクするシーンもあった。
「納得のいく内容ではなかったけど、特に後半は自分たちがボールキープできればスコアできたりと、ポジティブな内容もありました。シーズンはまだまだ続くので、次に活かしていけたらと思います」(CTB李)
スティーラーズは現在2勝6敗で9位と下位に位置する。今季からバイスキャプテンを託された期待の21歳が、チームの危機を救えるか。