コラム 2022.02.24

【ラグリパWest】孫子の兵法。千葉堅次 [元三洋電機社員]

[ 鎮 勝也 ]
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【ラグリパWest】孫子の兵法。千葉堅次 [元三洋電機社員]
千葉堅次さんは大阪・常翔学園の小論文指導を中心に、多くのラグビー関係者と交流がある



 湯浅大智が読んでいる本を見せてくれた。全国大会前だったように記憶している。

『孫子の兵法』

 どうしたの、この本?
「すすめられて、いただきました」
 得たものは?
「戦いはしないほうがいい。でもやるなら負けないようにしないといけません」

 この書物をそばに置き、不惑の監督は年末年始の大会で全国を制した。東海大仰星にとって6回目、歴代4位の記録となる。

 原典の『孫子』は中国の春秋戦国時代に書かれた。今から2500年ほど前のことだ。孫子は戦いのバイブルとなり、日本にも多大な影響を与えた。戦国大名、武田信玄の旗印「風林火山」はここから引いている。

 千葉堅次(けんじ)。この孫子の兵法を湯浅に手渡した人物である。
「古きをたずね、新しきを知る、です。湯浅先生と知り合った時期はよく覚えていません。ただ会えば、今なにを読んでいますか、と尋ねてこられます」
 読書好きな日本一監督にとって、千葉は書評家としての側面もある。

 千葉は今年83歳。卵型の顔の血色はよく、太いしわは刻まれていない。瞳は子供のよう輝く。これまで、この競技を志す高校生を学習面で支えて来た。履歴書がある。
<1995年から大阪工大高でラグビー部員の進路指導に加わる>
 四半世紀に渡り、小論文の書き方を教える。校名は2008年から常翔学園に変わった。仰星の支援者のように映るが、元々濃い交わりを持つのは同じ府内のライバル。全国大会優勝は仰星よりひとつ少ない5回である。

 千葉の指導は簡潔。ポイントは4つ。
 ①起承転結を考える。
 ②書くことを苦痛に思わない。800字は読めば2分ほどで終わる。
 ③普段からの勉強が大事。何か事が起こった時、それに対して自分の意見を持つ。
 ④自分の言葉で書く。評論家の文章を真似たりすると相手に伝わらない。

 福本航平は慶應の新3年生。千葉の助力があり、AO入試で環境情報学部に合格した。父の正幸には感謝がある。
「練習が終わって、航平は千葉さんに論文を見てもらって、ごはんまでいただいて帰って来ました。本当にお世話になりました」
 父はコベルコ神戸スティーラーズの現場トップ、チームディレクターである。

 千葉が楕円球を持った時間は短い。高校の体育の授業が中心。藩校の流れをくむ広島の福山誠之館(ふくやませいしかん)だった。大学は國學院。入部はない。
「ラグビーはおもしろいですね。みんながひとつになって戦います」
 そこに魅せられ、OBも顔負けの活動を長年続ける。
「お金は一切もらっていません。生活はできていますから」
 ラグビーにおける奉仕の精神が底にある。

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