ワールドスクールセブンズで、NZアジアンバーバリアンズが準優勝 !
ワールドスクールセブンズがおこなわれた(1月22日、23日/NZ・オークランド)。
2016年が初開催。7人制の高校トッププレーヤーを集めて開かれる大会だ。男子、女子のカテゴリーがあり、日本、カナダ、アメリカ、オーストラリアや太平洋の島国出身の高校生たちで構成されるチームが参加してきた。
NZからはNZコンドア(高校生の7人制NZ代表)、NZマオリ(マオリ系の選手で編成)、NZフィジアンスクール(NZの高校に通うフィジー系の選手で編成)やNZトンガンチーム(NZの高校に通うトンガ系の選手で編成)などが参加。大会のレベルは年々高くなっている。
スーパーラグビー、オールブラックス、ワラビーズ、セブンズの金メダリストを輩出してきた素晴らしい大会には、日本からは、女子チームが2017年、2018年大会に参加したことがある。
その大会に、今年はNZアジアンバーバリアンズ(以下、NZAB)が参加した。
チームの指揮を執った名富朗ヘッドコーチ(以下、HC)と、長年フィジーチームのマネージャーを務めてきたブレット・リーヴァー氏(今回はNZABマネージャー)の熱が実った結果だ。
両者がNZ在住の日本人選手たちに高いレベルでプレーする機会を与えることはできないかと大会運営部と掛け合い、参加に漕ぎつけた。
メンバー構成は、NZの高校に通うアジア系高校生と、アジア系以外の選手がそれぞれ半分ずつになるようにした。
アジア系以外の選手の中には2021年度のNZ高校代表選手数名+18歳以下のスーパーラグビーのチームに選ばれた選手たちを選んだ。
大会で戦えるチームに。それを最優先した。
同年代のNZのトップレベルの選手たちとの合宿を通じ、アジア系選手たちが、フィールド内外の振る舞いを学ぶことができる利点もある。
アジア系以外の選手たちにとっては、大舞台で力を披露する機会にもなる。多国籍で寝食をともにして戦う、サンウルブズをイメージした。
スタッフ陣には、名富HC、マネージャーのリーヴァー氏(元ホッケーNZ代表でもある)のほか、NZとサモアの7人制代表を率いた名将、ゴードン・ティッチェン氏をダイレクター・オブ・ラグビーとして迎え、名富HCとサニックス時代の同僚だったハレ・マキリ(元女子セブンズ日本代表HC)がアシスタントコーチで、平塚登夢(ヒラツカ・トム)氏もフィジオとしてサポートした。
選手たちは15歳から18歳。クライストチャーチ、パーマストンノース、ヘイスティングス、ウェリントン、ハミルトン、オークランドと、NZの南北両島から集まった。
1月18日から4日間の合宿をおこなって大会に臨んだ。
トレーニングやフィールド外での食事、プールで一人ひとりの仲を深めた。
練習試合をおこなって課題を把握し、ビーチでのリカバリーも実施。4日目には大会運営部による恒例の朝食会が大会会場のパクランガラグビークラブのクラブハウス内で実施された。
合宿で着用した練習ウエアは、黒地にカラフルな桜の花。ポロシャツは派手なピンクで、大会で着用するジャージーは白地に龍や桜の花などをあしらった。アジア色の強いデザインは目立ち、周囲から大きな反響があった。
練習ウエアをカラフルな桜のデザインにしたのは、乳ガンや骨髄腫などに苦しむ人たちをサポートする気持ちからだ。
NZABは、NZウォーリアーズ(18歳以下ラグビーリーグチーム)、NZクック諸島、NZサモア、NZコンドアズ(高校生の7人制代表チーム)と同じA組になった。
上位トーナメントのカップトーナメントに進むのは各グループ上位2チームまでだ。
ウォーリアーズ戦=22−7、NZクック諸島=22−0、NZサモア=17−10。初戦から3戦3勝と好スタートを切り、暫定ながらグループリーグ1位で初日最終戦のNZコンドアズとの試合を迎えた。
結果は7-24。昨年優勝のコンドアズを意識しすぎ、自分たちのプレーができず。圧倒された。
しかし、そんな試合展開の中で、後半途中から出場を果たした神奈川県出身の井上柊(しゅう)が個人技を見せた。相手選手を置き去りにするステップで1トライ。多くの日本人やアジア人の高校生選手に勇気を与える素晴らしいものだった。
彼をはじめ選手たちは、疲れが溜まっていた中で頑張ってくれた。チームのパフォーマンスや結果から、多くの人たちがNZABに関心を寄せてくれた。
グループ2位としてカップトーナメントへ進んだ2日目。準決勝1試合目はNZコンドアズ×NZトンガ(B=2位)、2試合目はNZフィジー(B=1位)×NZABの組み合わせだった。
第1試合は序盤まで接戦も、終盤にNZコンドアズが底力を見せて22−5とNZトンガを突き放した。第2試合はNZABが先制トライも、その後NZフィジーがトライを取るなど17−17でラストワンプレーに。NZフィジーの猛攻をNZABがゴール前で防ぎ、延長戦に進んだ。
ゴールデンポイント方式で、先に得点したチームが勝利というルールの延長戦の開始早々、NZABはボールを保持し、チームの強みであるFWをうまく使う。
最後はマラカイ・ランプリングが勝利を決定づけるトライ。22−17で勝利した。
決勝は、ふたたびNZコンドアズとの対戦となった。
試合はプール戦時と違い、NZABも本来のプレーで善戦した。しかしNZコンドアズは終盤に連続トライを決め、勝利を決定づけた。
12-36と敗れるも、試合後はNZABの選手たちからも笑顔が見られた。いい雰囲気だった。
大会後にはスタッフでレビューミーティングを開き、NZABの今後の課題やビジョンを次のように確認した。
①今後女子チームを結成し、男女ともに大会に参加しよう。
②より多くのアジア系選手がこの大会に出場し活躍できるようにしよう。
今後は、より多くスポンサーを集めて日本の高校と連携し、コーチや選手が、短期留学で大会に出場できる環境を整えたい。
あるいは合宿参加によって多くの人を巻き込み、良いチーム作りを実現したいと考えている。
大会で好結果を残した反響は大きく、大会数日後には、南アフリカにいるラグビー選手から、「NZABでプレーしたい」というメッセージがチームに届いた。
名富HCは、「もしこの記事を見て、近い将来NZABでプレーしたいと思った選手がいたり、推薦したい選手がいれば、連絡をほしい」と話す(AKIRA NATOMIのFacebookやチームのFacebookページから連絡を)。
チームをサポートしたい。そんな連絡も大歓迎ということだ。
「今大会でも、ジャージ類の提供など、多くの日本の知り合いの方々やニュージーランドの会社にスポンサーとして助けてもらい、無事チームとして大会を終えられました。選手たちも、すごく良い経験をすることができました。本当にありがとうございました」(名富HC)