国内 2022.01.22

指揮官もポテンシャル太鼓判 イーグルス津嘉山廉人が王者へ挑戦

[ 向 風見也 ]
指揮官もポテンシャル太鼓判 イーグルス津嘉山廉人が王者へ挑戦
横浜キヤノンイーグルスの津嘉山廉人。23日の埼玉ワイルドナイツ戦でも3番で先発する(撮影:松本かおり)


 プロだった。下丸子のオフィスにデスクのある社員選手だが、態度はさながら職業戦士だった。

「大学生の頃と違って、意識が変わったのかなと。それまでは自分でお金を払ってやっていたものを、いまはお金をもらってやっている。仕事でも上司にお願いしてしまっている部分が多いので、会社、チームへの責任というのが出てきた。それで、もっと頑張ろうと思い、取り組んでいます」

 津嘉山廉人。2021年4月に横浜キヤノンイーグルスへ加わる。身長185センチ、体重105キロの巨躯は、与えられた立場に突き動かされている。

 昨秋の雌伏期間には、ひたすら鍛え、駆けた。

 流経大時代と比べ、ウェイトトレーニングでは各種目で「10キロ(ずつ)」は重いものを持ち上げられるようになった。所定の距離を走り続ける「ブロンコテスト」の値を「10秒」は縮めた。

 沢木敬介監督が、チームのS&C担当へ確認を取る。

「津嘉(山)って、ブロンコ、いくつくらいで走るんだっけ」

「5分2秒です」

 スクラム最前列の右PRでありながら、運動量の問われるFW第3列並みの仕事量が期待される。本人の実感は。

「いま1番(左PR)で試合に出ている岡部(崇人)さんは自分よりも全然、速いので、なんとも言えないのですけど…」

 就任2季目の沢木監督は、日々の練習で試合並みの強度を求める。普段のトレーニングについて聞かれた津嘉山は、「走らせてもらっています」と苦笑する。

「(練習では)ただフィットネス(走り込み)をするというより、実戦的な形で走らせてもらっています」

 2022年1月に始まったリーグワンでは、開幕から2戦連続で先発出場する。

 8日の初戦では、敵地の千葉・柏の葉公園総合競技場でNECグリーンロケッツ東葛と対戦。自陣ゴール前でトライを防ぐシーンを作り、スクラムでも時間を追うごとに相手の反則を誘えた。33-12で白星を得る。

 続く15日には、ホームの日産スタジアムで2018年度トップリーグ王者のコベルコ神戸スティーラーズを55-21で下す。力強い突進で勢いを生んだ。

 その当事者は、「大学生の時とは(対戦相手の)フィジカルが全然、違って…。結構、後日ダメージが残りますね」。ただ謙遜する。

「他の人が頑張っているから、自分もここで負けてられないな。他の人が立っているんだったら、自分も立ってプレーしよう。そう、意識してやっています。(攻撃での好プレーについては)うちのラグビーでは、全員がオプションになるのが前提。そのなかでの細かいパスが活きて(相手防御を乱して)、それで(自身が)前に出られているとこもあると思います。周りに助けられている、というのはあります」

 期待の新人について、沢木監督は「入ってきた時は素人みたいな感じでしたが、いまは勉強して、よくなっている」。ファンにおなじみのシャープな言い回し。元日本代表コーチングコーディネーターの立場から、こうも続ける。

「ポテンシャルはあります。インターナショナルのレベルになれるか、なれないかは、今後の取り組みで変わってくる。(日本代表入りの)可能性はあるんじゃないですか。サイズもあるし、フィットネスはあるしね」

 津嘉山自身は、「(指揮官から)そういうことは言われていない」。己に言い聞かせる。

「きっと、それを言われちゃうと僕が(過剰に)意識して変なことをしちゃうので。一戦一戦、地道に、自分ができることをこなしていくのが、いまのところの目標かなと思っています。前回の試合よりは、いいパフォーマンスが出せるように。ここからスタンダードを上げていけたら」
 
 23日には埼玉・熊谷ラグビー場で、埼玉パナソニックワイルドナイツとぶつかる。昨年は前身のトップリーグで優勝。国内屈指の強豪だ。

 今季はクラスター発生のため開幕から2つ続けて不戦敗と苦しんでいるが、堀江翔太、稲垣啓太らワールドカップ経験者を多く擁する。

 イーグルスは、現体制発足前のトップリーグ2018年度シーズンは16チーム中12位で終戦。沢木監督就任後は上位陣を倒すなど進化の兆しを示しているが、昨季のプレーオフ準々決勝でワイルドナイツに敗れている。

 指揮官は、今度の相手を警戒する。

「いい選手、経験のある選手がいて、(活動が)中止になった状況からでもいい方向に導いていけるくらいの力がある」
 
 ただし今季は、「4強の壁を崩す」を目標としている。

 前回対戦時の状況を踏まえ、津嘉山は「ブレイクダウン(接点)」に注力する。向こうは横幅の広い防御網が特徴だ。イーグルスとしては攻撃中の接点で前に出て、タックラーの起き上がりを少しでも遅らせたい。さすらば、看板の連続攻撃がより機能するという算段だ。

「まず1対1で負けない。キャリア(味方の突進役)がいたら、相手の2人目(援護役)よりすぐにサポートに入る。ブレイクダウンのリサイクルタイム(球を出すまでのテンポ)を少しでも速くしたい」

 終始、謙虚だった津嘉山だが、チームの歩みについては自信を持って話す。

「これまでやってきたことと、今週、準備したことをやれば、絶対に勝てる。少しでもチームの力になれるようにしたいです」

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