坪郷だ。浅見だ。ワセダ、いぶし銀の輝きで才あふれる筑波大破る。
決勝PGを決めて祝福を受ける早大SO浅見晋吾。(撮影/松本かおり)
左タッチライン際から狙ったPGが、綺麗な弧を描いてゴールポストに吸い込まれた。ラストプレーで決めたのは、途中出場でSOに入っていた浅見晋吾だ。
「(途中出場後)最初のキックが入っていたので大丈夫と思いました。垣永さん(真之介主将)に声をかけられて緊張がとけました(笑)」
主将は、こう声をかけた。
「ひとりのミスで負けるようなチームは日本一にふさわしくない。思い切っていけ」
試合終了のホイッスルが鳴り、赤黒のジャージーが駆け寄る。歓喜の輪が揺れた。
9月29日に秩父宮ラグビー場で行われた関東大学対抗戦A、早大×筑波大は、20-17で早大がクロスゲームを制した。早大は開幕2連勝。昨季大学選手権準優勝の筑波大は開幕から2試合、まだ勝利がない。
スクラムで完全に制し、何度も相手ボールを奪った早大。筑波大のラインアウトが不安定だったことも考えると、もっと圧倒してもよかった。しかしミスでなかなか仕留めきれない。前半は2トライだけに終わった。
先制は筑波大。前半5分、SO山沢拓也がPGを決めた。
よくボールを動かしていた早大がやっとトライラインを越えたのは37分だ。敵陣深くからのスクラムから近場で連続攻撃を仕掛ける。左に展開、CTB藤近紘二郎がタックルをうけたところに、もうひとりのCTB坪郷勇輝が体を寄せる。ボールをもぎ取ってインゴールに飛び込んだ。
この坪郷、試合を通じていい働きをした。序盤には筑波大SO山沢がパスを受けたところに猛タックル。1年生、デビュー戦という相手に、さらに圧力をかけた。その後の展開に、少なからず影響を与えたはずだ。
「攻守ともタテ。それが自分に与えられた仕事だし、生きる道。おおよそ、やりたいことはやれた試合でした」
試合後、坪郷は爽快な表情だった。
早大の前半2つめのトライは40分。キックカウンターから大きく展開し、左タッチライン際をWTB荻野岳志が走り切ったもの。10-3でハーフタイムを迎えた。
押されっぱなしだった前半を過ごした筑波大。しかし後半、ブレイクダウンでより激しくプレッシャーをかけてからボールが動き出した。
8分、早大のミスボールを拾ったSH内田啓介が大きく走り、つかんだチャンスからWTB福岡堅樹がインゴールに駆け込んだ(ゴールも決まり10-10)。12分には、ワイドに攻めた早大にトライを許し、ふたたびリードを許すも(10-17)、攻め続ける意志を保ち続ける。そして、やっと追いついたのが試合終了まで残り5分の時だった。
早大の反則からキックで敵陣深く攻め込み、ラインアウトからブレイクダウン周辺を攻め続ける。SH内田主将が飛び込み、SO山沢のコンバージョンで同点(17-17)。が、残り数分の攻防で、結末は冒頭のように早大が笑った。
早大・後藤禎和監督は、何度も逆転負けに泣いた昨シーズンを振り返り言った。
「苦汁をなめてきた逆の展開で勝ったのは大きい。(ここ数年負けていた筑波に勝って)失っていた自信を少しずつ取り戻すきっかけになると思う」
筑波大・古川拓生監督は、「初戦の慶応戦では戦う集団になりきれていなかったが、今日は、その点は改善されたと思います。この(FWがセットプレーで圧倒される)状況の中で選手はよくやった。戦う姿勢の部分については後ろ向きにはとらえていない」。
デビュー戦のSO山沢は、「最悪のデキでした。最初のタッチキックでミスして消極的になってしまった…」と語った。