国内 2021.12.12

明大のハートに火をつける。大賀宗志が早明戦前に語った「自分が、自分が」のススメ。

[ 向 風見也 ]
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明大のハートに火をつける。大賀宗志が早明戦前に語った「自分が、自分が」のススメ。
早大戦でスクラムを組む前の明大PR大賀宗志(撮影:松本かおり)


 ファーストスクラム。明大の最前列で、大賀宗志が構える。

 対面と間合いを取って背筋を伸ばし、ぶつかり合う。その瞬間こそ互角に映ったが、やや間を置けば大賀が第二波を打つ。姿勢を保って後ろの選手とともに足をかき、相手をのけぞらせる。反則を誘う。

「まとまって、真っ直ぐ」

 12月5日、東京は秩父宮ラグビー場。加盟する関東大学対抗戦Aのラストゲームで、早大と戦った。1年時からレギュラー争いに絡む3年の大賀は、右PRとしてスクラムで強みを発揮した。

 さかのぼって11月20日の帝京大戦では、そのスクラムでプレッシャーを受けた。相手の右PRの細木康太郎主将に、塊を壊された。

「相手の土俵に立ってしまった」

 本来なら最前列の3人が一枚岩となって細木に圧をかけたかったが、理想の間合いで組めずに苦しんだ。

 早大戦へは「自分たちのペースに持っていこう。バインドのタイミングで、自分たちのヒットしやすい姿勢を取る」と原点回帰。かくして当日は、2本目以降もほぼ優勢を保った。何より大賀は、ボールが動き出してからも出色の働きを示した。

 前半4分頃には、2分後の先制点のきっかけを作る。自陣10メートル線付近右中間で、対するFBの河瀬諒介が駆け込むのを確保。味方FLの福田陸人とともにつかみ、なぎ倒す。その真上をNO8の大石康太副将とともに通過し、明大に攻撃権をもたらした。WTBの石田吉平のトライなどで、スコアは7-0となる。

 全国有数の実力者揃いのチームにあって、身長179センチ、体重112キロの3年生部員は、「誰にでもできることを、できるのが、いい選手」。モットー通り、黒子として動き回る。

「タックルしてすぐに起きる。隣とコミュニケーションを取る。そういう、スキルがなくてもできることをしっかりできる選手になりたいと思っています。(全国から優秀な選手が集まる)明大では(どの選手も)実力はそう変わらない。でも、いま言った上手じゃなくてもできることの差が、試合に出られるかどうかの差になっている。だから、そこを、突き詰めていきたい」

 試合は7-17で負けた。攻め込みながらも手痛い反則やミスを犯し、追加点が奪えなかった。対抗戦を5勝2敗の勝ち点26で終えた。8チーム中3位となった。

 3季ぶり14度目の日本一を目指す大学選手権には、12月18日の4回戦から登場する。大阪・東大阪市花園ラグビー場で対峙するのは天理大。前年度の選手権準決勝で苦杯をなめさせられた、ディフェンディングチャンピオンだ。

 その山を乗り越えても、難所は続く。26日の準々決勝では、対抗戦2位に位置してシード権を得た早大が待ち構える。場所は秩父宮。対抗戦屈指の好カードが再現される格好で、明大にとってはリベンジのチャンスが到来する。

 さかのぼって10月9日、チームは日体大戦(東京・江戸川区陸上競技場)で46-10と勝利も、エラーの多さで猛省を余儀なくされていた。ここから試合の分析を最上級生がおこなうようになり、続く24日の筑波大戦(埼玉・セナリオハウスフィールド三郷)では53-14と大勝した。今季の対抗戦の順位では日体大が筑波大を上回るが、筑波大は初戦で帝京大に7-17と迫るなど序盤は充実していた。

 今季の明大の成長ぶりについて、大賀はこう言及している。

「自分が(試合に)出始めたのは筑波大戦から。その前は、チームとしてやりたいことができていなかったわけではないですが、精度がまだまだでした。そこから4年生たちが各分野に分かれてレビュー、プレビューをしてくれるようになって、やることが明確になった。フォーカスポイントを試合中、練習中も言い合っていて、よりクリアにラグビーができるようになりました」

 その延長線上に、12月5日の80分があったわけだ。ここからもうひと伸びするための秘訣について、大賀は対抗戦最終節の前に語っている。

「自分たちのやることが明確になるなか、やることだけをやればいいという感じになってしまっている。自分が、自分が、となってもいい場面で決まったことしかやらない…みたいな。それで帝京大戦では受けに回っていた。だから今週(早大戦前)のテーマは、アグレッシブでした」

 くしくもその試合が終わった直後、SHの飯沼蓮主将も「形にこだわりすぎた。最終的には一人ひとりが前に出ることがチャンスを生む」。大賀と似た発言をしている。

 2人が理想としたメンタリティがフェーズ中の陣形づくり、パスコースへの駆け込みに具現化されれば、課題の解消に近づけそうだ。

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