早明戦は得意。早大の次世代リーダー相良昌彦は「シンプル」を意識。
明大は得意だと、早大ラグビー部の相良昌彦ははにかむ。
「他のチームは苦手なんですけど…。なんでですかね。成功体験が、あるからですかね」
12月5日、東京は秩父宮ラグビー場で明大にぶつかる。加盟する関東大学対抗戦Aの最終週だ。
当日の奮闘が期待される1人に、3年生の相良がいる。身長180センチ、体重98キロのタフなFLは、1年目で明大から白星をもぎ取っている。自身が出ていなかった対抗戦の対戦時は7-36と敗れたものの、6番をつけて出た大学選手権の決勝を45-35と制した。ライバルへの苦手意識が薄いのは、ルーキーイヤーの経験があるからのようだ。
話をしたのは2日の練習後。上井草にある早大のグラウンドの周りには、「緊張」「規律」「明治」といった書があちこちに貼られる。選手らは「緊張感がある」「独特な雰囲気」と気を引き締める。
特にポジション別でおこなうユニット練習では、喫緊の課題に着手していた。相良の参加したFWのグループは、おもにモールディフェンスでの動きを再確認。11月23日の慶大戦(秩父宮)は40-33と勝利も、後半にラインアウトからのモールでトライを重ねられた。同じ轍は踏みたくない。
低く肩を差し込んで相手同士のつながりを断つ、空中で球を捕った選手が着地した瞬間に手前に引きずり込む…。向こうに塊を作らせないスキルを、反復練習で落とし込んでゆく。
「モールを組まれる瞬間に、(その隙間へ)全員が息を合わせて入る。そのインパクトのところを(練習で)やっていました。どんなチームにも対応できるように」
こう語る相良は、最上級生ではないもののリーダーシップが期待される。系属の早稲田実業高では主将を務め、クラブにとって79季ぶり6度目となる全国大会出場を達成。いまは大学で、学年間での話し合いで仕切り役を任される。
意識するのは、簡潔さである。
円陣を組めば、CTBの長田智希主将やPRの小林賢太副将が「論理だてたこと」を伝えられる。そこで相良は「シンプルに言葉を発信する」のを心掛けるという。
「その時のゲームテーマ、攻守のブレイクダウン(接点)で意識するキーワードを簡潔に発信していければいいなと。まず、話すのが得意じゃないというのがあって。最近は、声の量でチームに影響を与えられたらと思っています」
長田主将は慶大戦で途中交代。明大に好感触を持つリーダーの存在感は増すばかりだ。
「とにかくFW内で僕が声を出し、チームを鼓舞したい。プレー面ではアタック、ディフェンス最前線で僕が一番、身体を張る。チームに勢いを与えたいです」
他会場の結果次第で果たせる対抗戦優勝はもちろん、自身2度目となる大学日本一へまっすぐ突き進む。