海外 2021.10.10

アントワンヌ・デュポン(トゥールーズ/フランス代表)の進化が止まらない。

[ 福本美由紀 ]
アントワンヌ・デュポン(トゥールーズ/フランス代表)の進化が止まらない。
10月2日におこなわれたビアリッツ戦後のアントワンヌ・デュポン。(Getty Images)



 デュポンが止まらない。

 トゥールーズ、またフランス代表SHアントワンヌ・デュポンだ。今季も開幕から絶対的な存在感を示していたが、先週のビアリッツ戦で、またしてもデュポンが『デュポンした』。

 拮抗したゲームの後半序盤、この日ベンチスタートだったデュポンが投入された。敵陣でのスクラムをトゥールーズがグっと押し込んだ。デュポンの前にスペースができた。
 ボールを持ち出して左へ走るデュポンにディフェンスが引き寄せられ、ギャップができる。そこに「ティム(ナナイ=ウィリアムズ)が来てくれてボールを渡したらトライしてくれた。」(デュポン)

 2分後、FWを当てながらフェーズを重ねた後、デュポンがラックからボールを持ち出しパスダミー。すると「扉が開いた」(デュポン)。
 一気に加速してゴールへ。

 ベンチサイドのトゥールーズのユーゴ・モラHCに、「あのSH、いいじゃない!」とスタンドから声がかかる。見事なプレーにビアリッツのサポーターも盛り上がる。

 先月、昨年度の年間表彰式が行われ、トップ14最優秀選手とフランス代表最優秀選手のどちらにもデュポンが選ばれた。
 トップ14最優秀選手にフランス人が選ばれるのは2011年度以来のことだ。

 ラ・ロシェルのタウェラ・カーバーローは「スピードもパワーもあり、頭もいい。そして大きな試合で必ず期待に応える」と評する。

 元フランス代表SHで、RWC2019では代表チームアシスタントコーチとしてデュポンを指導した、ジャン=バティスト・エリサルドは、「2019年と比べるとキックが良くなった。かなり練習したに違いない。ボールキャリアーへのサポートはラグビースクールの教材にするべき」と2年間での成長を認める。

 グラウンド外でも、「対戦するチームや選手について、よく調べている」とエリサルド。いにしえの対決を見るのも好きで、歴代の名勝負についてもよく知っている。
 ラグビーが大好きなのだ。

 試合を見ていても感じられる。ボールを持ってゴールへ走る時、デュポンは笑っている。嬉しいのだ、ラグビーできることが。

 スーパースターの出現に、フランスラグビー界は盛り上がるが、本人は平常心。今回の受賞についても、「チームのパフォーマンスのおかげ」、「14歳の時に一緒にプレーしたグレゴリー(アルドリット)、アントニー(ジュロン)と3人揃ってノミネートされたのが嬉しい」と、常に「チーム」、「友情」である。
 こちらもラグビースクールのお手本になりそうだ。

 このまま伸び伸び成長して、大好きなラグビーを満喫してもらいたい。その姿を見ることが、ファンの喜びになるのだから。

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