国内 2021.07.16

明治大で今季導入の「ナレッジ・グループ」。自主性が生んだ進化

[ 多羅正崇 ]
明治大で今季導入の「ナレッジ・グループ」。自主性が生んだ進化
副将を務めるNO8大石康太。(撮影/松本かおり)



 3季ぶりの王座奪還を目指す明治大学は、2月上旬からの約1か月間、新4年生で毎日のように話し合った。1日約1時間、それぞれが時間を都合して集まり、新キャプテンやスローガンなどを決めていった。

 そうして3月8日に公表した新スローガンは『MEIJI PRIDE』。学生幹部は4人。新主将にSH飯沼蓮、副将にNO8大石康太、寮長にCTB江藤良、主務は堀越智成。
 他に役職を作らなかった理由について、SH飯沼主将は「4年生全員がリーダーの当事者意識を持つため」と語った。

「去年まではリーダーの下にも縦割りの『リーダーズ・グループ』があって、8グループにそれぞれリーダーがいました。それだとリーダー達に頼ってしまうということで、あえて他に役職を振らないことにしました」

 2018年度より導入されたリーダーズ・グループは、縦割りの8グループがともに行動する取り組み。3季にわたり学年を越えたコミュニケーションに貢献してきた。

「ただ僕たちの学年は、主体性をもって自分たちで考えられることが強みでもあり、『4年生全員がリーダー』という気持ちで引っ張っていこうと決めました」

 その主体性が、新たな取り組みを生んだ。

 リーダーズ・グループは発展的解消。新たに「ナレッジ・グループ」という分析グループを選手たちが発案し、チーム首脳陣と交渉して導入した。

 学年をまたぐ縦割り構造は同じだが、中身は違う。グループで英語の「knowledge」のカタカナ表記である「ナレッジ(知識、知恵)」を高める分析をおこなうという。

「自分たちの試合を部内のカテゴリーに関係なく、それぞれのナレッジ・グループでレビューします。たとえば週末にAチームからCチームまで3試合あったら、『このグループはアタックをみてください』、『ブレイクダウンをみてください』と振り分けます」

 明大は例年主力のA、Bチームを「ペガサス」、Cチーム以下を「ルビコン」と呼ぶが、たとえばペガサスは、ペガサスの試合だけを分析するのではない。ナレッジ・グループでは全カテゴリーの試合を均等に扱う。

「全員で他のカテゴリーもレビューすることで、チーム全体の課題点が見えてきます。Aチームだけが強くても意味がありません。全部のカテゴリーが共通認識をもって、同じラグビーをしながら全員で強くなっていく、ということを意識してやっています」

 これまであった取り組みを選手たちが改良し、チーム首脳陣と交渉して実現する。2018年の紫紺復活から着実に前へ進んでいる

 明大は今季、全3戦の春季大会Aグループで全勝。その後の招待試合の1試合目は帝京大学に28−32で惜敗したが、2試合目の天理大学には26−21で競り勝ち、昨季の大学選手権準決勝の借りを返した。

「天理大学さんとの試合はみんな意識していたと思いますが、春シーズンは自分たちにフォーカスをしていました」

 今季注力している「フィットネスとクイックテンポ」(SH飯沼主将)の手応えを掴んだ試合は、春季大会ラストマッチの東海大学戦。

 当時怪我でメンバー外だったSH飯沼主将は、ピッチ外から神鳥裕之新監督の初陣でもあったホームゲームを見て、自信を深めた。

「東海大学さんはラインアウトからのセットプレー、フィジカルがすごく強いチームで、前半は流れが悪かったです。ただ後半は苦しい時にフィットネスで勝負するチャレンジができました」

 前半は7−19でリードされたが、後半のスコアで21−7と上回り、最終盤にNO8大石副将が同点トライ。勝ち越しのコンバージョンで、劇的な逆転勝利(28−26)を掴んだ。

 秋へ向けた意気込みを訊ねた。SH飯沼主将は自分たちで掲げたチームスローガンを用いて、力強い決意を語った。

「今年は目立ったスター選手はあまりないと思いますが、ひたむきにプレーできる人たちが多いです。クイックテンポとフィットネスを武器として、1試合ずつ勝ち上がっていきながら、スローガンの『MEIJI PRIDE』にもある通り、しっかり優勝して明治の誇りを取り戻したいです」

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