日本代表 2021.06.07

テビタ・タタフが「いままでで一番きつい」練習に挑むわけ。夢の一戦に胸躍らせる。

[ 向 風見也 ]
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テビタ・タタフが「いままでで一番きつい」練習に挑むわけ。夢の一戦に胸躍らせる。
別府合宿でスクラム練習に励むテビタ・タタフ(撮影:長岡洋幸)


 走って身体を絞り、もっと走れるようになる。

「いまは121キロ。自分的には119くらいでプレーしたい」

 ラグビー日本代表のテビタ・タタフが、公式記録上は124キロとなっているチーム最重量のウェイトについて述べる。ちなみに身長は183センチ。合宿参加者中、タタフのプレーするFL、NO8として登録される計9名(追加招集を含む)のうち2番目に小柄だ。

 5月27日に本格始動の別府合宿には、28日午後に合流した模様である。23日まではサントリーの一員として、国内トップリーグをプレーオフ決勝まで戦っていた。

 オンライン取材に応じたのは、数日タフな練習をして臨んだ6月5日。減量指令の有無について聞かれると、「体重、ちょっと落とします!」と続けた。

「フィットネスを上げないと。いま、重いので走るのがちょっと難しい」

 ジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチ率いる現日本代表では、トニー・ブラウン アタックコーチが攻めのシステムを唱える。各人は与えられた持ち場へ散り、空いたスペースへ大胆にパスやキックを通す。

 味方が蹴ったボールを追う動き、向こうの蹴り返しを促してからのカウンターアタックも目玉とする。リーチ マイケル主将は、球を持たぬ際の献身が肝だと語る。

「フォーカスしないといけないのはリアクションスピードの速さ、トランジション——アタックとディフェンスとの切り替え——の速さ、立ち上がる速さ。ここで、世界一を目指さないといけない」

 力強い突進とジャッカルが長所のタタフも、おのずと機動力を求められるのだ。救いは、周りが前向きな雰囲気を醸していることだと笑う。

「一番の課題はフィットネスです。(練習は)めちゃめちゃ、きついです。…もう、たぶんいままでで一番きついです。(現日本代表の)雰囲気は、元気です。きつくても、隣の人とかが(奮起を促すよう)しゃべっていて。練習前のエナジーもいいです」

 トンガ生まれの両親のもとサモアに生まれ、幼い頃にトンガへ転居。2012年の来日以降は、東京・目黒学院中を経て目黒学院高に在籍し、日本の文化と日本のラグビーになじんだ。日本の義務教育を経験しているため、トップリーグでは外国人枠外でプレーできる。

 日本代表デビューは2016年春。中竹竜二ヘッドコーチ代行率いる、若手中心の日本代表で計3キャップを得た。以後は大学生が選考対象となりづらくなったことなどを受け、しばらく選考リストと距離を置く。サントリー入部3年目で迎えたこの春、待望の代表復帰を果たしたところだ。

 2019年のワールドカップ日本大会では、高校と大学の同級生のアタアタ・モエアキオラが日本代表スコッド入り。モエアキオラは本番前、ニュージーランドのチーフスへ入っていた。

 次のワールドカップは2023年にフランスである。タタフはこのほど、記者から「ターゲットは?」「2023年か?」と誘い水を向けられ「(目標は)2023年のワールドカップです」と述べたが、まずは、今度のツアーで全力を尽くしたい。

 26日にはスコットランド・マレーフィールドでブリティシュ&アイリッシュ・ライオンズとぶつかる。イングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランドの代表的な選手により4年に一度編まれる連合軍を前に、「そういう試合があってすごく嬉しいです。あとはメンバーに入れるよう頑張っています」と意気込む。

「フィジカルバトルのところ、楽しみです。向こうはでかいし、重いし、強い。そこに負けないように頑張っていきたい」

 サントリー加入1年目の2019年春頃は、いまの目標値の「119キロ」に近いサイズでプレーしていた。持ち前のパワーを接点で活かしながら、プレー後の起き上がりや動きのキレでも光った。外食の写真を管理栄養士に送るなど、計画的な肉体改造に励んだ結果だ。課されたタスクへは正直に向き合える。今回も然りだろう。

 夢の大一番。強くて走れるタタフが暴れる。

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