トヨタ快走の裏に「レフリー目線」あり。二足の草鞋履くSH滑川剛人
レッドカンファレンス4連勝。27日に地元・パロマ瑞穂ラグビー場で、同じく全勝のサントリーサンゴリアスを迎え撃つトヨタ自動車ヴェルブリッツが3月23日、オンラインでメディア対応。現役トップリーガーであり、レフリーとしても活動しているSH滑川剛人が登場。デュアル目線でチームを語った。
滑川剛人はトヨタ加入9季目。今季は4試合中、3試合でメンバー入り。後半、SH茂野海人共同主将の交代でピッチに入り、試合をフィニッシュする役割が定着した。昨季のプレータイムは交代出場5試合、総計79分。出番は大幅に増えた。
「ジェイク(ホワイト=前監督)のときは、チャンスをものにできず、モヤモヤしていました。監督が変わって、スターターで出るよりも後半20分で入って、いい展開に持っていく“舵取り”が自分には一番合ってる。それが自信を持ってできているのが要因」
31歳のSHには、もう一つ大きなミッションがある。1年前、チームと日本協会からの勧めで始めたレフリーだ。仲間がバイウイークで休息していた3月20日は、花園ラグビー場でトップチャレンジリーグ、近鉄対コカ・コーラを担当した。
試合中、しばしば外国人選手と笑顔でコミュニケーションをとる姿が見られた。レフリーを始める前、滑川にとってレフリーの認識は「選手がやっているのをさばく」だったのが、現在はそうではなくなっている。
「選手の中に入っていかないと。そのほうが、両方にとって楽。試合前、『俺に情報をくれ』と言ってます。ゲニア(近鉄SH)も、レフリーに抗議している試合の映像を見たので、試合前にいろんなことを話しました。向こうも『トヨタの選手だよね』と、知っていてくれた。『このブレイクダウン、自分はこう判断したんだけど、どう思う?』。そういう一言を入れるだけで、いいプレーは絶対に生まれる」
昨今、危険防止のため首から上にいくプレーに対しての判定が厳しくなり、一発でレッドカードのケースも出ている。この状況も、選手とレフリーの両側から捉えている。
「たまたま入っただけ、というのは選手目線。レフリー側で見ると、それは(反則を)とるしかない。一つの判定で負ける。逆にそこを守れば勝てる。その意識はレフリーをやって変わりました」
その意識改革は、選手としてトヨタのグラウンドで生かされている。
「手と足を使ってコミュニケーションとってます。うちはこれまでオフサイドとか、そこまでこだわってなかった。今は『ディシプリン』と声が聞こえる。チームにレフリーがいることはアドバンテージ。目線が一つ増える」
これまでのトヨタといえば、激しいプレーが売りの半面、無用の反則も多く、ペナルティを減らすことは長年の課題でもあった。今季の快走は、チーム内にレフリーの視点が生まれたことも無縁ではないだろう。
レフリーとして目指すのはスーパーラグビーを吹くニック・ベリー。「選手あがり」(滑川)として先を歩いていると感じる。
「あの人は絶対トライを見逃さない。TMOを使わず、(トライの)1メートル以内にいる」
トップ選手として培った「読み」は、本人の将来にとっても大きなアドバンテージだ。
レフリーとしての夢は「2023年ワールドカップで、笛を吹くこと」。来季からレフリーの比重を増やすことも頭にはある。その前に、土曜のサントリー戦、そして初のトップリーグ王座だ。
「茂野が仕事をはたした後、自分の仕事が待っている。最終的にいいプロセスを踏んで、いい結果を出したい」