国内 2021.02.05

特異なシーズンに喜びあった。関東学院大の山崎海は「試合ができて幸せ」。

[ 向 風見也 ]
特異なシーズンに喜びあった。関東学院大の山崎海は「試合ができて幸せ」。
スクラムを押す関東学院大の山崎海。11月14日の専修大戦(撮影:松本かおり)


 2020年の春以降、多くの国民が従来にない「常識」を受け入れた。理由は言うまでもなかろう。

 大学の体育会でラグビーをする部員も、寮の一時解散、試合や合宿の中止と、幾多の制限を強いられてきた。

 全国の上位チームが集まる関東大学対抗戦A、関東大学リーグ戦1部の開幕は、普段より約1か月遅い10月に定められた。今季、初の大学日本一に輝く天理大ら関西大学Aリーグに至っては、11月まで始まらなかった。

 多大なストレスがかかりうる状況でありながら、このステージの存在へ感謝する若者がいた。

「試合ができて幸せなのと、ようやく勝てたことでこれから波が来ると思います」

 山崎海。今季からリーグ戦1部でプレーが叶った、関東学院大の3年生である。語ったのはシーズン中盤だ。11月14日の専大戦では、48-21と今季1勝目を挙げていた。

 過去に全国優勝6回の関東学院大は、山崎の入学した年から2015年度以来の2部に参戦していた。昨季まで関東学院大に在籍した某選手は、身体にテーピングを巻く作業を青空の下でおこなうのが2部の現実なのだと苦笑したものだ。

 山崎も、言葉を選ぼうと苦心しながらつい笑みをこぼす。

「(試合前の準備をする場所が)教室とか、気持ちの上がらない場所の時もありました」

 2部と1部では対戦相手の実力はもちろん、会場の規模が違う。関東学院大が専大を制した一戦も、埼玉・セナリオハウスフィールド三郷という本格的な陸上競技場で開かれた。

 結局、今度のシーズンを1勝6敗で終えた山崎は、話をした時点で「(残りは)もちろん全勝、残留(を目指す)。来年につながるような試合結果を残したい」。1部にいる価値を認識していた。

 身長187センチ、体重97キロ。すらりとした長躯を低くかがめ、ロータックルを連発する。運動量の求められるFLへ入り、防御で魅する。

 当の本人は謙遜する。

 衝突時のインパクトには第三者が評価する通り「自信を持っている」ものの、相手とぶつかりながら両腕を締めるスキルが「課題」だと語る。

「(タックルは)全然、得意じゃないです。周りとの連携が取れれば、安心していけるという感じ」

 もっとも、そのタフな資質で下級生時からレギュラーを張ってきた。最上級生となる来季はリーダー候補だろう。

 板井良太監督、元三洋電機(現 パナソニック)主将の榎本淳平ヘッドコーチからは「悪い雰囲気で声が出ていない時には、自分が発信して盛り上げられるようにと指導してもらっています」。黄金期を選手として支えた指導陣、神奈川のキャンパス内にある天然芝グラウンドの存在が嬉しいと話す。

「(来季も)頑張って、タックル、コンタクトをしていきたい」

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