女子ラグビー界の逸材は毎日がたのしい。佐賀工業女子・町田美陽
楽しくてしょうがない。女子ラグビー界の逸材は、佐賀工業ラグビー部での毎日を満喫している。
16歳の高校1年生、町田美陽(まちだ・みはる)だ。
今春、故郷の福岡・北九州市を離れ、高校ラグビー界の強豪・佐賀工業の女子部員8人の一人として佐賀に暮らし始めた。
もちろん一人暮らしではない。県外からやってきた女子ラグビー部員との共同生活だ。
「女子の先輩たちとワイワイしながら楽しくラグビーができていて、寮生活も楽しいです。お母さんとよく電話もしているので、ホームシックはありません」
多芸多才な174センチのプロップだ。
佐賀工の女子チームでコーチを務めているのは、NECのスクラムハーフだった藤戸恭平。現在は社員として広告業務に従事しながら、母校・佐賀工の女子強化に力を入れている。
NECで11年間プレーし、女子15人制代表でBKコーチを務めた経験もある藤戸コーチは、町田の将来性についてこう語る。
「身体が大きいんですが足が速くて、良いタイミングでステップも切る。オフロードパスも上手いです。7人制では自分で裏に蹴って再獲得したりするんですよ。かなりの可能性を秘めた選手です」
そんな町田は2020年9月、その潜在力が関係者の目に止まり、なんと女子15人制の合同合宿に招集された。
強化選手とTID(Talent Identification=人材発掘・育成)選手が一堂に会した合同合宿で、TID選手として5日間、トップ選手にまじり北海道バーバリアンズ定山渓グラウンドで汗を流した。
「合宿は・・・凄かったです。勢いやスピードが比べものになりませんでした。最後にヘッドコーチ(レスリー・マッケンジー女子日本代表HC)に『スクラムの姿勢が良くなったよ』と言ってもらいました」
グラウンド外での思い出について問われると「練習終わりにみんなでジェラートを食べたこと」。趣味は音楽を聴くことだが、好きなアーティストを訊ねられるとプロ歌手ではなく“歌い手”の名が挙がる。将来有望な大器だが、素顔は女子高校生だ。
逸材は3兄姉の末っ子として北九州に生まれた。兄の影響で幼稚園からヤングウェーブ北九州で楕円球を追い、中学時代に佐賀工の小城博総監督に声を掛けられ、県外の佐賀工で練習をするように。
そして中学卒業後、堤ほの花が女子部員第1号となり、2019年には単独チームとして7人制大会に参加した佐賀工女子の一員となった。
「女子の先輩達がとっても優しくて、グラウンドも人工芝で環境もいいなと思いました」
現在は先輩の女子部員5名(3年生2名、2年生3名)、同期2名と共に「7人制の全国大会に行くこと」(町田)を楽しみにしている。もちろん高い個人目標もある。
「15人制の日本代表に入りたいです」
町田は北海道で行われた合宿に続いて、10月19日より菅平で行われた女子15人制合同合宿にもTIDメンバーとして参加した。
町田は招集された40名中で今回も最年少の16歳。しかし身長174センチは招集メンバーで最も高かった。まだまだ完成形の見えない逸材は、これからどんな未来を進んでいくのだろう。