コラム 2020.08.31

ラグビー金言【25】誰も想像しない領域を切り拓くのが早稲田の原点。

[ 編集部 ]
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ラグビー金言【25】誰も想像しない領域を切り拓くのが早稲田の原点。
1986年3月1日生まれ、34歳。まだまだ安定感は抜群。(撮影/松本かおり)



 南アフリカに勝つなど、2015年のワールドカップで躍進した日本代表の中心として活躍し、世界に名を轟かせた五郎丸歩。いまもヤマハ発動機ジュビロで安定した力を発揮し続ける男は、この春、34歳になった。

 佐賀工時代には花園に出場して、高校日本代表にも選出。早大に進み、黄金時代を築いた。大学1年のシーズン終了後に初めて日本代表に選ばれ、2015年のワールドカップまでに同代表キャップ57を獲得した。

 ヤマハ発動機でトップリーグ通算1000得点以上を記録し、スーパーラグビーのレッズ、フランス・トップ14のトゥーロンでもプレーした男は、母校・早大の創部100周年記念本の取材時、早稲田ラグビーの文化に触れて成長した自分について、いろいろ話した。

【五郎丸歩の金言】

 五郎丸歩は大学入学後、早稲田ラグビーのカルチャーに触れ、好きになった。 「勝利へのこだわりを感じました。一般入試で入学してきた普通の学生が、どんな状況であろうと、最後の最後まで決して勝負をあきらめない。そういった光景は、社会に出たら、なかなか出会えないと思います。誰一人、うまい人に媚びるようなこともない。それぞれが(ライバルに)勝負を挑む。それが、毎年繰り返される。クラブに受け継がれている、そんなカルチャーが好きでした」

 大学1年時から大学選手権で頂点に立てた。
「高校時代から意識はしていたのに届かなかった日本一に初めてなれたことには感激しました。日本一になるチーム、選手って、どんなものなんだろうと思ってきたのが、すぐに答えが見つかった。こんなにこだわって準備したら、もう、やることないな。それぐらい突き詰めたことをやって決勝に臨み、勝った。勝ちたいと、チーム全員で本気で思う。そうしたら、こんなに大きなパワーが生まれるんだと知りました」

 大学2年時(2005年度)の日本選手権では、トヨタ自動車に勝った(28-24)。ヘッドキャップを被り、フェイスガードを付けて戦いに臨んだ。大学選手権後におこなわれた東西学生対抗試合で顎を骨折して入院。試合の2週間前に退院したばかりだった。
 ビッグパフォーマンスを成し遂げた理由をこう話す。
「あのシーズンだけで勝ったわけではない。そう思う。当時はメンバーが揃っていたのも確かなのですが、強い者に勝つ、大きい相手に勝つというものを、早稲田が長く継承し続けてきたからこそ勝てたと思う。クラブの歴史が勝たせてくれた部分もあった」

 同期や先輩の結婚式で、4年時に優勝した代の部員しか歌えない『荒ぶる』が披露される時間になると、日本一になれなかった年の人たちが、バツが悪そうにしているのを見ることがある。「同じように努力したのだから気にしなくていいのに」と思いつつ、こうも感じる。
「歌える人たちはそうでもないのに、歌えない代の人たちは歌いたい。そんな文化が、このクラブをより強くしているし、深みをもたらしているのも事実だと思います」

 独特のカルチャーを、この先も大切にしてほしい。
「あのトヨタ戦、2015年のワールドカップの南アフリカ戦もしかり、誰も想像しない領域を切り拓くのが早稲田ラグビーの原点だと思います。大きい相手に小さい者が勝つ。誰も見たことがない景色を自分たちで見る。ファンの人たちに見せる。これからも早稲田のラグビー部には、自分たちの原点を追い求めてほしいし、体現していってほしいと思います」


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