自粛期間ささみとYouTube愛した。NEC新主将・中嶋大希の新しいステップ。
流経大ラグビー部の3年だった2016年に日本代表入りした中嶋大希が、2020年夏、入社3年目のNECで共同主将に就任した。
ルーキーイヤーから先発に定着した身長171センチ、体重79キロのSHは、不完全燃焼に終わった2019-2020年シーズンを受けてコンディショニングを見直していた。普段は同世代の選手とSNSでの情報発信に注力。グラウンド内外でファンの獲得を目指す。
「NECでいまが3年目。1年目から試合に出させていただいて、2年目でもうひと爆発するぞという気持ちでいたんですけど、ふがいない結果というか…。自分でもストレスがたまるシーズンだった」
埼玉の深谷南中、深谷高などを経た24歳がこう話したのは、2020年1月からの国内最高峰トップリーグでわずか1試合しか出られなかったからだ。開幕前に左足首を痛め、リハビリの日々。開幕から連敗に苦しんでいた時期のほとんどを、隊列の外で過ごした。
復帰できたのは2月22日の第6節。ここから捲土重来を期したが、新型コロナウイルス禍などのためにシーズン不成立を受け入れた。
内なる炎を鎮めるのは、そう簡単ではなかった。
「復帰戦も負けてしまって、そこから試合がなくなった。いい状態で早く復帰して勝ち星を、と思っていたんですけど…」
間もなく強いられたのは、寮での自粛生活。4月上旬からは千葉県内にあるチームのトレーニング施設も使えなくなり、社業ではテレワークが推奨された。
従来、寮で身体を動かす習慣はなかったが、「寮にも軽く運動できる部屋を作ってもらって、(同じ場所に住む他選手と)交代、交代で運動していく感じ」。持久力アップや疲労回復が期待されるワットバイク、筋肉に負荷をかけるダンベルやバーベルなどを持ち込み、新しい暮らしに適応してゆく。
強制的に与えられたオフ期間。まず求めたのは基礎体力の維持だった。太りやすい体質を気にして、ひとけの少ない朝に周辺を走って回った。
寮で食事の出ない昼時は、高たんぱくで脂質の少ない料理を作った。スーパーで買ってきた鶏のささみを茹で、パスタ料理には野菜を多く入れた。味わい重視の脂っこい料理は、週末のお楽しみにした。
けがの再発も防ぎたい。
チームのトレーナー陣と話すなか、「下半身の関節が硬くて、その負担が足首のけがにつながっている部分がある」とわかった。故障箇所の可動域が狭くなったことで、膝にも余分な圧力がかかっていた。
両足の筋肉をバランスよく取り戻しながら、「痛くても動かす。ほぐすしかないです」。患部とその周りをより柔らかくし、パフォーマンスを高める。
2021年1月から始まりそうな新シーズンに向け、牙を研ぐ。
「追い込み過ぎず、ハードワークする期間ではないので、トレーナーさんとも話して、身体の悪い部分を見つめ直して、それをひとつひとつ潰していく。自己管理からベストに持って行って、ベストなパフォーマンスができるシーズンにしたいです」
休息時間も活用する。スケジュールに空白のできた3月以降は、他の若手選手と「ヤングロケッツ」というアカウントを作った。
同期入社でSOの亀山雄大に誘われる形で、専用のパソコンを購入するところから始めた。女性トレーナーのオンライントレーニングで苦しんだり、選手が2対2に分かれての料理対決を楽しんだりする様子を動画共有ツールのYouTubeで公開。応援コメントを励みにする。
「少しずつですけど、毎回、気にして見てくれるファンが増えた。ちょっとでもチームのプラスにはなっているかなと。海外の選手を見ると、サポーターを作るための活動をちゃんとやっている。一方、日本人選手はあまりそういうところを意識していない部分があるなと、(チームの)先輩方とも話していて。皆を巻き込みながら、そうした部分でも頑張っていきたい」
現在は、主将3季目となるFLの亀井亮依とともに先頭に立つ。
「NECで勝つ、結果を出すことを考える」
2022年以降の新リーグ発足もにらみ、パフォーマンス、ファンサービスの両面で「結果」を出したい。