好調ラファエレ、祖国サモアとの対戦にも「ひとつの試合」。そのわけは?
日本代表が歴史的勝利を挙げた。チーム唯一のトライを決めた場面では、ラファエレ ティモシーの技が光った。
9月28日、静岡・エコパスタジアム。ラグビーワールドカップ日本大会のプールA・第2戦に挑んだ。対するアイルランド代表は、開幕前には世界ランク1位という強豪国だ。
9-12とビハインドを背負っていた後半18分。敵陣22メートルエリア右のスクラムからの連続攻撃で、途中出場していたSHの田中史朗が周囲の声を聴きながら球をさばく。NO8(キックオフ時はFL)の姫野和樹らが防御に亀裂を入れる。
するとアイルランド代表が反則を犯し、日本代表はしばらく攻め続けられるアドバンテージの宣告を受けた。
もし日本代表がミスをしても、アイルランド代表が反則した位置で日本代表ボールでのプレーが再開される。そのため「より思い切ったアタックができる状態になった」とWTBの福岡堅樹。敵陣ゴール前左でインサイドセンターの中村亮土が田中にボールを要求し、左隣の松島幸太朗(WTBで先発し途中からFBへ移動)を飛ばすパスを放る。
これを受け取ったのが、ラファエレだった。相手の防御をひきつけながら捕球するや、左端にノーマークで立っていた福岡へ瞬時にさばく。ハンズパスと呼ばれる技術を披露したのだ。
結局、福岡のトライとSOの田村優のコンバージョンが決まる。16-12。スタンドの歓喜を誘った。
「最後のディフェンダーが僕をマークしていたと気付いていて。あとは亮土がいいパスを送ってくれた」
身長186センチ、体重98キロの28歳は、20日のロシア代表戦でもタックルされながらのバックフリックパスでトライを演出。東京スタジアムで30-10と勝利をつかんでいた。
攻撃システムの構造上、ラファエレらアウトサイドBKとFW第3列はグラウンドの左右両端でチャンスメイクする機会が多い。そのためこだわってきたのが、オフロードパスの正確性の向上。ロシア代表戦でのプレーは練習のたまものだと本人は言う。
「ルースFW(FW第3列)、バックスで常に練習しているスキルです。それを試合のなかで、チャンスがあれば遂行しようという意識でいます」。
話をしたのは10月1日。5日に愛知・豊田スタジアムでおこなわれるサモア代表戦に向け、都内でトレーニングをしているさなかのことだ。ニュージーランドのデラセラ・カレッジ出身のラファエレだが、出身国はサモア。事実上の母国との対戦を間近に控える格好だが、当の本人は落ち着きぶりを示す。
「自分の家族にとっては重要な試合だと思っています。ただ自分としては、これをひとつの試合と捉えています。サモア代表が相手だからといって新しい何かをしてしまうと準備が変わり、自分のパフォーマンスに悪影響を及ぼしてしまうかもしれませんから。(いつもと)同じ準備をしたい」
防御で「サモア代表のアウトサイドバックスにはフットワークが強い選手が多い。それを抑えたい」と警戒しつつ、オフは仲間と寿司屋で息抜き。静かにその時を迎える。