接戦の接点で光った。帝京大卒ブロディ・マクカラン、神戸製鋼で成長実感。
わずか6点リードで迎えたノーサイド直前。神戸製鋼は対するリコーのカウンターアタックに対抗する。SHで先発し途中からSO入りのアンドリュー・エリス主将は、こう話す。
「今週は自分たちにとってのテストマッチ(代表戦)。ディフェンスでどれだけハードワークできるかにフォーカスしていました」
自陣中盤まで攻め込まれても、タックラーがすぐに起き上がって守備網を敷く。相手FLの松橋周平の突進を阻むと、その接点に絡んだのはブロディ・マクカラン。帝京大から神戸製鋼入りした新人だ。NO8として先発したこの日は終始、タックルとその後の素早い起き上がりでチームの「フォーカス」だった防御を引き締めていた。
マクカランが松橋の手元へ絡むと、地面に置かれるはずの楕円球がほんの少し宙に浮く。ルーズボールを抑えた神戸製鋼は、そのまま逃げ切りに成功したのだった。
接点(ブレイクダウン)でのボールの働きかけはタイミングやレフリング次第でペナルティと判定されうるが、この時、マクカランは冷静だった。
「それまで神戸製鋼の反則も多かったから、無理にブレイクダウンに入らないようにしていた。でも、あそこは(合法だという)自信があった。いいタイミングで入れた」
7月5日、東京・秩父宮ラグビー場。トップリーグ・カップ戦で、昨季トップリーグ王者の神戸製鋼は同8強のリコーに19-13で勝つ。プールDで3連勝を決め、25歳のルーキーは声を弾ませた。
「めちゃめちゃ楽しい。成長しています。(チームには)経験の多い選手、コーチがいっぱいいる。毎日、いい緊張感があって、ポジティブなフィードバックも受けられています」
身長192センチ、体重105キロ。長い手足とばねを活かしたハイボールキャッチにオフロードパス、何より勤勉さで際立つ。ニュージーランドのハミルトンボーイズ高などを経て入った帝京大では、3年生まで大学選手権の9連覇にコミット。ラストイヤーは副将を務めた。
神戸製鋼ではニコラス・ホルテン、アンドリース・ベッカー両コーチの教えを吸収。ラインアウトで適切な位置で捕球するための判断力、接点に腕を絡めるか次の防御に備えるかの感覚を養う。チームには元ニュージーランド代表のエリスら、貴重なキャリアを誇る同僚も多い。名手と過ごす新生活を振り返り、マクカランは笑う。
「(神戸製鋼で)ラグビーのいい癖がついた」
トップリーグでのバトルには「シンプルにフィジカルが強い。簡単にゲインできないし、簡単にタックルできない」と舌を巻く。「今年プラス2年」で日本国籍取得へ挑みたいとし、早期の日本代表入りも目指す。学生時代から日本語は堪能。極東のハードワーカーとして、列強国の大男に立ち向かいたい。