岩渕HC&小澤主将が感じたワールドセブンズシリーズの「厳しさ」とは。
オリンピック東京大会開幕まで、2年を切っている。メダル獲得を目指す男子7人制ラグビー日本代表の岩渕健輔ヘッドコーチ(HC)は、「危機感が強い」と気を引き締める。
2018年は、2シーズンぶりに世界サーキットのワールドラグビーセブンズシリーズへコアチームとして参戦。オリンピックに向けた強化を図る日本代表陣営は、当面の目標を安定的に8強入りできるチームになることと定めていた。
しかし実際には、現地時間11月30日~12月1日にドバイでの2018-19シリーズ第1戦に臨み、最終順位を16チーム中14位、サーキットの獲得ポイントを「2」と苦しむ。続く12月8日、9日には、南アフリカ・ケープタウンでの第2戦に参戦。ここでも最終順位を16チーム中15位タイとし、ポイントは「1」のみの獲得に終わった。
メンバーは同国パスポート保持者だけという陣容。指揮官は「15人制の代表が同じような状態で戦ったらどうかを想像してもらえれば、そんなに甘くないこともわかるかと思います。選手も我々も、7人制の難しさを肌で感じたと思います」と言う。強豪国とのゲームが立て続けに組まれるワールドシリーズにあって、選手の調子を保つことに苦心したようだ。
「簡単に勝てる世界ではない。1試合目がうまくいかず、その流れを変えられず日程が過ぎてしまいました」
小澤大主将も「勝てない厳しさを改めて感じた」と認める。「メンタルの疲れ」という最大の課題が見て取れたのは、治安の問題からか外出をしづらかったケープタウンだったという。勝ちに行くというより「こなす」という姿勢でゲームへ向かう選手が出てきてしまい、チームをまとめるのに苦しんだようだ。
「2大会続けて戦うことはどこのチームにとっても難しいと思うのですが…。ケープタウンではなかなか外に出られず、メンタルの疲れが出た。もっと強くなっていかないと」
12月18~22日、代表候補選手にあたる男子セブンズ・デベロップメント・スコッド(SDS)が東京・府中でキャンプを張った。
ふたつの大会での反省から、岩渕HCは選手の「一回、一回の練習への姿勢、気持ちの切り替え」を注視した。1日に複数回組まれた練習時間を公式戦に見立て、いずれの機会でも100パーセントの力を出し切れるかどうかをチェックしたのだろう。かつて7人制の南アフリカ代表を率いたポール・トゥルー氏を招き、「世界トップチームから見て日本はどうか」という視点で助言ももらう。緻密なレビューを重ねる。
続く1月4~11日には、グアム合宿を実施。1月26日、27日のニュージーランド・ハミルトン大会、2月2日、3日のオーストラリア・シドニー大会というワールドシリーズの第3、4戦を見据える。
「日々、週間のスケジュールも、試合に対応できるように変えています。(改善点は)1秒でも早く立ち、1秒でも早く倒すこと。これは(日本代表にとっては)チームに海外出身選手がいるかいないかで変わる大きなポイントです。いまやっていることのいい部分、変えるべき点を毎日見返しながら、いい準備をしてニュージーランドへ向かいたいです」
12月のキャンプ中、小澤は「今回の合宿ではジャパンスタンダードをテーマに置いています。それをインターナショナルスタンダードに上げられるようにしていきたい」。ケープタウンでみられた「こなす傾向」をなくすべく、「オンとオフの使い方もしっかりさせていけたらと思います」と続けた。
視線の先には以後のワールドシリーズ、さらには2020年開幕のオリンピックがある。個別に栄養指導を受けているなか「いまは大会中に体重が落ちる選手も多いですが、それもなくなるようにできたら」とする小澤は、こうも続けた。
「3日間の大会を戦うメンタリティの準備を怠ってしまうと、オリンピックで戦うのは難しい。相手の分析、食事や睡眠などによる身体の準備…。これらにももっと気を遣う必要がある」
進むべき道は明確。あとは突き進むだけだ。