「勝たないと意味がない」と言い切る、慶大・古田京主将の悔いなき敗戦。
4点リードしていた。
79分40秒で組まれたスクラム。SO古田京の頭の中で、勝利へのシナリオは明確だった。
「(スクラムからの展開は)完璧に準備していました。FWで時間を使おうと」
しかし、レフリーの手があがる。
慶大側がスクラムを崩した(コラプシング)とのジャッジだった。
「すぐに切り替えました。そういうことがあっても守る準備はしていましたから」
早大が左タッチへPKを蹴り出す。ゴール前ラインアウトからの攻撃。最後は赤黒ジャージーの11番、WTB佐々木尚がインゴール右スミに飛び込んで勝負は決した。
12月22日に秩父宮ラグビー場でおこなわれた全国大学選手権準々決勝で、早大がラストシーンの逆転劇で慶大に勝った。20-19だった。
昨年の同選手権では大東大に28-33、一昨年は天理大に24-29。慶大は、ともに準々決勝で惜敗した。特に昨シーズンは21点を先行されながらも一度は逆転。そこから再度ひっくり返されて敗れる悔しい内容だった。
当時3年生だった古田は試合後、「いいラグビーはできているのに結果が出ない。そこを追求していかないといけない」と、ラストイヤーに懸ける気持ちを言葉にした。
2018年度のシーズン。古田はキャプテンとなり、チームの先頭に立った。
関東大学対抗戦では帝京大と競り、明大に勝つ。早慶戦では試合終盤、14-21のスコアのまま敵陣深くに攻め込み、最後の最後まで食らいついたが届かず。同対抗戦3位で大学選手権に臨むことになった。
大会初戦の3回戦で京産大に43-25と勝ち、ふたたび早大と対峙する権利を得る。
準備の段階でやり残したことはない。再戦は、充実した精神状態でキックオフを迎えた。
立ち上がりの3分に先制は許したものの、WTB宮本瑛介のキックチャージ、古田のコンバージョンキックで逆転した慶大(7-5)。38分にトライ(SO岸岡智樹のコンバージョンも成功)を許して7-12でハーフタイムを迎えるも、スクラムで優勢に立ち、残り40分の見通しは悪くなかった。
後半、慶大は先手をとった。55分、NO8山中侃がインゴールに入る。12-12と同点に追いついた。60分にPGで勝ち越されるも、64分には押し込んだスクラムから攻めて古田が自らトライ&コンバージョンを決めた(19-15)。
ラスト10分は状況が二転三転する展開も、残り20秒でマイボールスクラム。早大・相良南海夫監督すら「さすがに万事休すと思った」というところからの逆転負けだった。