もうひとつの“花園” サニックス・ワールドユース 予選会
第91回全国高校ラグビー大会の準決勝が大阪・近鉄花園ラグビー場で華やかに開催された5日、寒風吹く福岡のグローバルアリーナでも気合十分の高校生たちが楕円球を必死に追っていた。
全国から16校が集まったこの大会は、『サニックス 2012 ワールドラグビーユース交流大会 予選会』。別名、“裏花園”と呼ぶ人もいる。参加したのはいずれも、本当の花園行きがかかった各地区予選で敗れた学校の生徒たち。憧れの舞台を気にはしながら、「来年度こそは」の思いを胸に、正月は九州で過ごした。
・保善高校(東京都第1予選:2位)
・目黒学院高校(東京都第1予選:ベスト4)
・明治大学付属中野高校(東京都第2予選:2位)
・慶應義塾高校(神奈川県予選:2位)
・静岡聖光学院高校(静岡県予選:2位)
・三好高校(愛知県予選:2位)
・伏見工業高校(京都府予選:2位)
・洛北高校(京都府予選:ベスト4)
・大阪桐蔭高校(大阪府第1予選:2位)
・近畿大学附属高校(大阪府第2予選:ベスト4)
・報徳学園高校(兵庫県予選:2位)
・筑紫高校(福岡県予選:2位)
・小倉高校(福岡県予選:ベスト4)
・大分雄城台高校(大分県予選:2位)
・荒尾高校(熊本県予選:2位)
・鹿児島実業高校(鹿児島県予選:2位)
1、2年生による新チーム部員と指導者、それに数人の保護者が集まっただけの“裏花園”にスポットライトは当たらない。しかし、優勝すれば世界のトップチームが集う『 ワールドユース交流大会』(4月28日〜5月5日)に出場できる。未来のオールブラックスやスプリングボクスたちと真剣勝負ができる、世界でもまれな高校単体チームによる国際大会に参戦できるのだ。
優勝決定戦には伏見工と大阪桐蔭が進んだ。
前半7分、大阪桐蔭がラインアウトからモールドライブで前進し、HOのトライで先制した。対する伏見工は11分、SOが一瞬の隙をついて相手22メートル内に切り込み、ゴール前のラックからすばやく右に展開、最後は人数を余らせた状態で14番にボールが渡り、逆転ゴールにつながるトライを決めた。
運動量は伏見工が上だった。高校日本代表候補のFB松田力也やPR江口晃平などがたびたび力強い突破を見せ、京都から来た赤いジャージーの若人たちが長く敵陣で攻め続けた。BKはキックを織り交ぜながら相手を揺さぶる余裕あり。しかし、大阪桐蔭の粘り強いディフェンスはこれからの1年間に期待を抱かせるものだった。奪ったトライは2本ずつ。最後はグラウンドの中央で双方のFWがガツンガツンの肉弾戦を見せ、やがてノーサイドの笛が鳴った。17−12、伏見工の勝利。
伏見工の高崎利明監督は、「相手陣内で圧倒的に攻め続けていたのだから、40点くらいは取ってもよかったかなという気はします。でも、この新チームの選手たちは優勝経験があまりないので、自信になったのではないでしょうか。伸びしろのあるチームなので、これからどんどんいけると思います」と大会を振り返った。
2011年度は、京都成章(第91回全国高校大会出場)との間に差があったことを認める。11月の予選決勝で敗れてから新たな気持ちで再スタートし、選手たちもワールドユース出場を目指してモチベーション高くこの大会に臨んだ。課題は多く、クリアしたい目標はいくつもあるが、世界の強豪と対戦できるチャンスをつかんだ。
「日本の高校生たちのレベルは上がってますよ。実際に、大学に入って1年目で活躍している子も多い。いまはブロック別の強化システムがしっかり整っていますし、まずはチームのレベルを上げてから、次はブロック全体のレベルアップにつなげていこうという意識が浸透してます。日本協会がユース強化に取り組んで、U16からU18の一貫した指導体制も確立してきてますので、将来は楽しみですよ」
U20日本代表も率いる高崎監督にとっては、“裏花園”もまた、ジャパンの未来へ希望が膨らむ大会であった。そして、全国高校大会に出場できなかった選手たちに『サニックス・ワールドユース交流大会 予選会』という場を与えてもらい、感謝していた。
2011年度の高校王者は1月7日に大阪・近鉄花園ラグビー場で決まる。そして、ひとつの区切がつく。3年生はそれぞれの道に進み、1、2年生は春の選抜大会出場などを目指して、この冬も楕円球と夢を抱いて走る続ける。
<サニックス 2012 ワールドラグビーユース交流大会 予選会 最終順位決定戦>
【優勝決定戦】
伏見工(京都) 17 − 12 大阪桐蔭(大阪)
【3位決定戦】
筑紫(福岡) 19 − 3 報徳学園(兵庫)
【5位決定戦】
洛北(京都) 17 − 0 荒尾(熊本)
【7位決定戦】
三好(愛知) 26 − 5 保善(東京)
【9位決定戦】
慶應義塾(神奈川) 26 − 5 鹿児島実(鹿児島)
【11位決定戦】
近大付属(大阪) 12 − 12 目黒学院(東京)
※ 同点(トライ、ゴール数も同じ)により、ファーストトライを奪った近大付属が勝者
【13位決定戦】
小倉(福岡) 14 − 14 明大中野(東京)
※ 同点(トライ、ゴール数も同じ)により、ファーストトライを奪った小倉が勝者
【15位決定戦】
大分雄城台(大分) 12 − 5 聖光学院(静岡)