コラム 2018.08.27

兄貴より先に連覇を狙う。 東海大学付属大阪仰星高校中等部

兄貴より先に連覇を狙う。 東海大学付属大阪仰星高校中等部
全国中学生大会で連覇を狙う、東海大大阪仰星高校中等部の3年生22人。
前列左から4人目がSOの北村光基主将。

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ウォーターバッグやメディシンボールで体を鍛える東海大大阪仰星高校中等部の部員たち
 兄貴より先、弟は全国連覇を狙う。
 東海大大阪仰星の中等部を待ち受けるのは、9月開幕の「太陽生命カップ2018 第9回全国中学生大会」だ。
 主将の北村光基に気負いはない。
「去年のことは考えず、いちからやっています。先輩たちはすごいですけど、自分たちは自分たち。この代での景色を見たいです」
 監督の能坂尚生は解説する。
「新チームになったら目標を3年生に決めさせます。今年も『全国優勝』と言いました。じゃあ、それを達成するためにどうしていくのか、ということを彼ら自身が考えます」
 中学生といえども、主体は部員たちにある。
 昨年は全国大会3試合で平均得点36、失点6と圧倒的な強さを見せつけた。
 今年のチームは、5月の府大会と7月の関西大会で優勝する。
 府大会決勝は相生(あいおい)に73−7。府選抜での出場となる関西大会決勝は京都府に59−19。この結果、3つある関西枠の第一代表として、4年連続4回目の全国出場が決まる。チームには最多7人の仰星生がいた。
 8月5日から6日間の菅平合宿での練習試合を覗いた土井崇司は感嘆する。
「ケタ違いの強さでした。入学時は他チームの中学生とあまり変わりません。しかし、目標を持って日々生活する中で、これだけ成長できるんだ、ということを実感しました」
 1984年の赴任と同時に高校にラグビー部を立ち上げ、冬の花園優勝5回の土台を作った名将が驚くほどの伸び具合だった。
 北村がSOとしてまとめるBKは、パス回しの正確さや速さなど、高校のトップレベルと見劣りしない。まっすぐに駆け上がり、相手を引き付けてボールが放せる。
 能坂は伏見工(現京都工学院)で、南橋直哉(宗像サニックス)とCTBコンビを組んだ。その後に進んだ東海大での経験もすべて、チームに落とし込まれている。
 ベースにあるのは、中高生が一体でやる練習だ。中等部創部時からのスタイルで、部員たちに違和感はない。
 能坂は笑顔を浮かべる。
「いい見本が常にそばにあります」
 高校監督として3回の全国大会制覇を達成した湯浅大智からも教えを受けられる。
 今年は変化を加えた。
 ばらばらに高校生の中に加わっていた練習を中学生だけでまとまってこなす。
「すべて教えてもらえるので受け身になってしまう。そこを少し変えようと思いました」
 北村にはしっくりきている。
「練習中でもすぐに言い合えます」
 成功や失敗のチームでの共有は、実戦における修正能力の高さにつながってくる。
 ラグビーの基礎となる体作りも怠りない。
 部員の身長は140センチから180センチオーバーまでさまざま。顕著に現れる発育差からのケガを防ぐためにも、腹筋、背筋など体幹を鍛え上げる。ウォーター・バッグを持ち上げて走ったり、おもりの入ったメディシンボールでパスをする。
「高校があるから道具にも恵まれています」
 能坂には、昨年10月に人工芝化されたグラウンドとともに感謝がある。
 北村は帰宅後も自主トレを欠かさない。家の中にある鉄棒にぶら下がる。
「小さいSOは好きじゃありません。自分でトライを獲れるSOになりたいです」
 現在の身長は170センチ。小3から阿倍野ラグビースクールで競技を始めただけに、特性を理解し、さらなる成長を求めている。
 能坂は、指導者、そして保健・体育教員として7年目を迎えた。もう一人の顧問・北康宏とともに、65人(3年=22、2年=14、1年=29)の部員たちを導いている。
「今は中3の担任をしていますが、持ち上がりで3年目なりました。教え方が、少しずつ深まってきている感じはしています」
 昨年度、高校5回目となる全国制覇にはFB谷口宜顕が名前を連ねた。先発メンバー中唯一の1年生は中等部出身でもある。
「出てくれたからではありませんが、彼の存在は、チームにとっても、僕にとっても心強いですね」
 仰星のファースト・ジャージーはグラデーション。胸には紺、赤、白の3本線が入るが、ベースは水色から紺に変わる。裾に行くほど、その色彩は濃くなる。
 この色合わせを考えたのは能坂だ。
「淡い色から、最後は引き締まる紺色になってほしい。ここの高校生のようにですね」
 全国大会は、茨城県水戸市のK’sデンキスタジアムで9月15日からの3連休を利用した3日間開催で行われる。
 8校参加のため、3回勝てば連覇はなされる。そうなれば2012、2013年の天理に続く2校目の快挙となる。
 土井、湯浅、そして能坂を得た仰星。
 中高一貫で鍛え上げ、高校では有能な人材が外部からやって来る。
 盤石の組織の完成。
 それを知らしめるためにも、中学は2年連続で全国の頂点に立ちたい。
(文:鎮 勝也)

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