女子
2018.05.04
すべては世界で勝つため。熊谷から三重へ。タックラー、末結希の決断。
162cm、59kgの24歳。先の太陽生命ウィメンズセブンズシリーズでパールズは5位。
(撮影/松本かおり)
名前通り、勇気を持って決断した。
アルカス熊谷に所属していたタックラーが、この春から三重パールズでプレーしている。
仲間との別れ。お世話になった人への気持ち。それらすべてを、さらなる成長へのエネルギーにする覚悟だ。
サポートしてくれていた職場・熊谷市役所の人たちにも「(残念だけど)思い切りやってください」と言葉をもらった。
末結希(すえ・ゆうき)は日本の女子ラグビー界を代表するタックラーだ。
移籍の理由を、「常に成長できるところにいたいと思ったので」と言った。
3月30日に埼玉から四日市へ引っ越した。新しいチームでの練習中、外国人選手に激しいハンドオフを食らった。
「これだ、と。レベルの高い中で練習できていることを実感できました」
ニーッと笑った。
昨年夏にアイルランドで開催された女子ワールドカップ(15人制)に日本代表の一員として参加した。
フランス戦で始まった大会での5試合。初戦こそ大敗も、アイルランド戦、オーストラリア戦と健闘した(最終成績はイタリア戦にも敗れ、香港に勝っただけの1勝4敗。12チーム中11位)。
大会が終わって感じたのは、「慣れたらやれた」の感覚だった。
「フランス戦は強さに圧倒されましたが、それを経験した後は対応できたし、パワーやスピードにも慣れて、それなりに戦えたと思うんです」
だから海外に出て、フランスやオーストラリアのクラブに所属することも考えた。
「自分を高められる日常、強度の高い練習をできる中に身を置く」
それを実現できる環境を探した。
パールズを選んだのは、NZを中心に6人の外国人選手たちがいるからだ。彼女たちとぶつかり合えば、世界を体感できる。
2016年に誕生したばかりも昨年の太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ、富士山裾野御殿場大会で優勝、今季からシリーズのコアチームに昇格したチームのスピード感も刺激になった。
「すごく魅力的に見えました。そのレベルアップの波に自分ものって成長したいと思いました」
2021年のワールドカップに絶対出たい。
目の前の大会で全力を尽くし、その結果セブンズでも評価され、2020年の東京五輪の舞台に立てたなら。
とにかく全力で毎日を過ごす。
長崎県出身。3歳の頃、ばってんヤングラガーズで楕円球を追い始めた。ゆのきラグビースクール、福岡レディースでプレーを続け、長崎西高、東京学芸大に学ぶ。アルカス熊谷、15人制女子日本代表、女子セブンズ日本代表で活躍。経験を重ね、ラグビーをよく知る。弟の拓実さんは帝京大ラグビー部に所属している。
昨夏の女子ワールドカップで日本代表は5試合で1002回のタックルと体を張り続けた(参加チーム中最多)。末は109回タックルし(大会3位の個人タックル数//チーム最多)、成功率は93パーセントの高さだった。
ただ、それでも足りない。
流れを変え、世界で勝てるタックル。
それを追い求めているし、求められている。
新しい職場となった住友電装では、ワールドカップで女子日本代表を率いた齊藤聖奈主将とともに働く。外国人選手たちの住む寮に、ラグビーメモが貼ってあるのを見て意識の高さを感じた。
常に世界を感じながら暮らす生活を気に入っている。