国内 2018.05.04

目指すはパイロットか広告マン。中大4年の重松隆宏、ラストイヤーへの決心。

目指すはパイロットか広告マン。中大4年の重松隆宏、ラストイヤーへの決心。
中央大学のフルバック、重松隆宏。試合後で目が腫れている(撮影:向 風見也)
 おそらく、トップリーグなどに加盟するチームから誘いはあったのだろう。それでも中大4年の重松隆宏は、今年いっぱいでトップレベルから退きそうである。
 正確には、「(トップリーグなどのチームへは)行かない可能性の方が高いです」だ。
「トップリーグでやりたい気持ちもあったのですけど、自分が本当にやりたいことは何かと考えた時、違う道へチャレンジしようかなと。それも、だいぶ、険しいのですけど…。(各チームの採用担当者に)認められたことは嬉しくて、それを糧に4年目をがんばろうと思います。これからは、違う形で活躍したいです」
 4月29日、東京・法大グラウンド。関東大学春季大会Bグループの法大戦に挑んだ。身長182センチ、体重92キロと恵まれたサイズの重松は、ロングキック、味方のミスボールをひょいと拾い上げてのラインブレイクなど、最後尾のFBとして持ち味を披露する。
 28−47で負けたとあって「フォーカスしている点に力を注げていなかった」と険しい顔つきを浮かべながら、完全燃焼への決意もにじませる。
「ボトムアップのチームが強い。下からの突き上げが起こりやすい環境を、引っ張る側の4年生が作っていきたいです。チームの目標は大学選手権ベスト4ですが、僕は大学に入った時から満員の会場で試合をしたいと思っていました。そう考えると、決勝に…と」
 福岡の城南中で楕円球と出会い、修猷館高を経て中大入りした。上京したての頃は寮内でのコミュニティー構築に戸惑ったが、最初の夏合宿が終わる頃には笑って過ごせるようになった。当時の弁はこうだ。
「寮の部屋は3人部屋なんですけど、最初は先輩(との接し方)が全然わからない状態でした。でも、いまは自分の部屋、最高です!」
 グラウンド内では1年時から、加盟する関東大学リーグ戦1部でレギュラー出場を果たす。以後は故障によるリハビリに耐えたこともあったが、ずっと主力BKとして期待されてきた。
「毎年、いい後輩たちが入ってくる。(定位置争いへの)恐怖感があるなかで試合に出させてもらえるのは、彼らのおかげだと思っています。先輩にもよくしてくださって、対人関係の勉強ができました。最後は、下級生にいい影響を与えられるような引っ張り方をしたいです」
 堂々たる体格と大胆なパフォーマンスで、トップリーグ関係者からも注目を集める。本人も学年を重ねるごとに自分の将来と向き合うのだが、頭に浮かんだ選択肢は「パイロット」と「広告代理店」だった。
 「パイロット」は高校時代からの夢だったという。校内で企画された職場体験で都内にある航空会社の研修センターへ訪問。機体のコックピットと同種の部屋で操縦桿(そうじゅうかん)を握り、憧れを抱いた。
「単身赴任の関係で親を空港で出迎えることが多く、その時から飛行機っていいなと思っていました。東京でも操縦桿を握るというなかなかできない経験をしました。その時の景色もよかった。友だちがジャパン(年代別代表の遠征)で飛行機に乗っていますが、そういういろいろな人を運ぶということがすごいな…と」
 一方で「広告代理店」は、就職に際し自分を見つめ直す過程で興味を持った。中学時代に大手企業がスポンサードする太陽生命カップへ参加し、茨城・ケーズデンキスタジアムの芝で試合ができたことを思い返したのだ。
「福岡では大会の決勝戦も土のグラウンドでやっていましたが、太陽生命カップでは1回戦の試合でもいいグラウンドを使わせてもらいました。僕も(子どもたちに)そういう環境を提供したいな、と感じました」
 
 希望するふたつの進路に共通するのは、選手とは違う立場で楕円球界を支援できそうなことだ。進路について聞かれた重松も、「これまでとは違う形でラグビーを振興したい」と強調する。自身の去就に関する情報が水面下で拡散されることへは「これで受からなかったら…」と苦笑するが、航空業界とマスコミ業界を目指すことに迷いはない。
 ジャージィ姿でもリクルートスーツ姿でも、勝って笑いたい。
(文:向 風見也)

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