ワールドカップ 2011.10.15

ウエールズの勝利を奪ったレッドカード 若大将にタフコール

ウエールズの勝利を奪ったレッドカード 若大将にタフコール

 試合開始直前の雨で、芝が滑りやすい状態のなか行われた準決勝第1試合。序盤からウエールズが敵陣で試合を進め、前半8分、SOフックのペナルティゴール(PG)で先制した。フランスがハンドリングエラーで苦しむのを尻目に、ウエールズの前半の地域獲得率は65%。しかし18分、ウエールズ主将のFLウォーバートンが相手WTBクレールにスピアータックル(相手を持ち上げて落とす危険なタックル)を放ち一発退場。流れが徐々にフランスへ傾き始めるた。


 


 「決して悪意のあるプレーではなかった。私はボールを争いに行き、通常のタックルのつもりだったが、ヒットしたあとに彼の体が持ち上がってしまってああいう結果になってしまった」 (ウエールズ代表ウォーバートン主将)


 


 「彼はダーティーな選手ではないし、彼にレッドカードを与えることによって準決勝を台無しにすることに何の意味があるのか。私はあれがイエローカードといわれれば受け入れるが、経験豊かなレフリーが即座にレッドカードの決定を下したことに驚いた。決勝戦を戦う可能性があった我々の運命は、あのレッドカードによって奪われた気がする。それでも、世界的強豪相手に1人を欠きながら、選手たちは個々の力を最大限に発揮し、ゴールが決まっていたら勝つところまで追いつめた。彼らを本当に誇りに思う」 (ウエールズ代表ガットランド監督)


 


「サム(ウォーバートン)を非難する理由は何もない。彼はタックルに行き、力が強い奴だからあんな結果になってしまった。ラグビーにはよくあることだ。しかし、それが最悪の時間帯に起きてしまった。ハーフタイムではみんなヘトヘトだったよ。フランスの強力な攻撃に対し、14人でトライを防ぐのはかなりの労力だった」 (ウエールズ代表WTBシェーン・ウィリアムズ)


 


 後半51分までにフランスにPGを3本許し、3-9とリードされたウエールズだったが、魂のタックル連発で主導権は握らせなかった。ハイパントに対する空中戦は安定感があり、ラックでも強さが光った。59分、ウエールズは敵陣22メートルでのブレイクダウンから、SHフィリップスが一気に抜け出し、この試合唯一のトライを獲得、1点差と迫った。しかし、途中出場したベテランSOジョーンズのコンバージョンキックは左ポストに嫌われ、逆転とはならず。
 75分、ウエールズはハーフウェイでPGチャンスをつかみ、今度はFBハーフペニーがキッ
ク。ボールはポストに向かってまっすぐ伸びたが、距離がわずかに足りなかった。
 残り時間が2分、1分と減り、敵陣10メートル内で徐々に前進していたはずのウエ
ールズだったが、フランスが死力を振り絞ったタックルを連発し、フェーズが25回を超えるころにはハーフウェイまで押し戻され、最後はCTBジェイミー・ロバーツがノッコン。まもなく試合終了を告げる笛が鳴った。


 


 試合内容では勝ったウエールズ。しかし夢は潰えた。特に23歳の若大将ウォーバートンには、責任を痛感させられるタフな一戦となった。だが彼らの舞台はまだ終わっていない。気持ちを切り替え、21日には24年ぶりの3位を狙う。


 


(文・竹中 清/オークランド)


 

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