国内 2017.12.21

対照的巨頭。36歳北川俊澄の快挙に22歳ジェイソン・ジェンキンスは何と?

対照的巨頭。36歳北川俊澄の快挙に22歳ジェイソン・ジェンキンスは何と?
ラインアウトで競るトヨタ(赤)の北川俊澄と、支えるジェイソン・ジェンキンス(撮影:宮原和也)
 2人の年の差は14歳。今年度のトヨタ自動車は、空中戦、地上戦で身体を張るLOの位置に、対照的なキャリアの2人を揃える。
 36歳で入社15年目の北川俊澄、22歳で南アフリカ・ブルズから新加入のジェイソン・ジェンキンスだ。
 力強い南アフリカ代表を率いて2007年のワールドカップを制したジェイク・ホワイト新監督のもと、それぞれ「195センチ、113キロ」「203センチ、125キロ」というサイズを活かす。杭を打つ。
 ホワイトの母国で20歳以下代表、A代表に選出されてきたジェンキンスは、「学びたい意欲がある」からと来日した。
「違う視点から自分を成長させたいと思って日本に来ました。日本のラグビーはクイック。それを学び、持ち帰れる…。ラグビーの好きなところは、闘争心、フィジカリティ、どんな相手にも勝るチャンスがあるということです」
 京都・伏見工高、関東学院大を経て2003年からこのクラブにいる北川は、新人の姫野和樹主将を支える「クラブ主将」を任されている。新しい上司とその方針を、穏やかな口調でまとめ上げる。
「ジェイクはチームに一体感をもたらすのに長けている方。選手には(局面ごとに)いくつかのオプションを与え、自分たちに決めさせながらも、『チームの方向性はこっち』と示す。和気あいあいとした雰囲気です」
 12月16日、地元の愛知・パロマ瑞穂ラグビー場。日本最高峰であるトップリーグの第12節で、2人はカンパニーカラーの赤が基調のセカンドジャージィを着てフル出場を果たす。NTTコムに22−15で辛勝。チームにとって2010年度以来となる4強入りの可能性を、次の最終節まで残すことができた。
 一時は3−15と離されながらの逆転劇を「試されたゲームでした。前半はたくさんのミスを犯した」と振り返ったのは、若き助っ人のジェンキンスだ。
「洒落たプレーはやめ、ただ勢いをつけてキープしようとして、最後はその報いが来たのだと思います」
 一方でシニアプレーヤーの北川は、自陣ゴール前で防戦一方だったラストワンプレーを生々しい言葉で振り返っていた。
「なんとしても止めないと…と。FWの皆も、何分経っているのかがわからなくて。笛が鳴って初めて40分過ぎているのがわかって、よかった、よかったという感じでした。(試合終了を知らせる)ホーン、鳴っていましたか? 全く耳に入っていなくて、他の選手とも鳴っていなかったんじゃないかと話していたくらいで。それぐらい、中に入り込んでいました」
 ちなみにこの日は、北川がリーグ戦150試合出場を達成した。
 日本代表として2011年のワールドカップニュージーランド大会などで合計43キャップを取得した北川だが、2013年12月22日のトップリーグのリーグ戦100試合目はサントリーに7−49で敗れている(山梨・中銀スタジアム)。節目で苦い思いをするのは、もうたくさんだった。
「節目の試合はことごとく負けている。きょうはこういう接戦で勝てて、ものすごくよかった」
 北川の快挙に、ジェンキンスは「本当に驚くべきこと」と感嘆した。小学5年からラグビーを始めた年上の選手が、30代半ばまで出生国の第一線のLOとして身を粉にしている。その事実が、リスペクトの対象だ。
 17歳で楕円球と出会うまでクリケットをしていたというジェンキンスは、先輩LOとの交流をこう振り返ってもいた。
「こんな経験のある選手とプレーができるのは光栄。北川は、私が日本のラグビーにアジャストするのを手助けしてくれます。自分にとってのロールモデルが北川です。チーム内でもリスペクトされています」
 2人は12月24日、前節と同じ会場での第13節出場を目指す。ここで神戸製鋼に勝てば、別会場の結果と無関係に念願が叶う。
(文:向 風見也)

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