各国代表
2017.04.16
久々に来た? 刺さるジャパンの「12」。東海大の鹿尾は笑顔で踏み込む。
4月9日、東京・秩父宮ラグビー場。第18回東日本大学セブンズ大会のさなかのことだ。
東海大の選手たちが、自分たちの試合を終えてゴールポスト裏のベンチへ引き上げる。チームを率いる木村季由監督の前を、1人ひとりが会釈しながら通過する。そのなかで、にっと白い歯を見せてお辞儀をする4年生がいた。媚びるでもなく、距離を置くでもなく。常日頃から屈託のない人のようだった。その姿を見届け、指揮官は言った。
「そう、こういう感じなんです」
チームのムードメーカーで鳴らす鹿尾貫太は、公式で「身長177センチ、体重90キロ」と決して大柄ではないサイズながら、コンタクトの多いインサイドCTBを任される。東福岡高を経て門を叩いた東海大では、1年時から公式戦に出場。3年目の昨季はレギュラーに定着した。
今年3月は若手強化を目指すジュニア・ジャパンに加わり、フィジー(スバ)でのパシフィック・チャレンジに参戦。環太平洋諸国の巨躯へも果敢にぶつかり合った。その活躍が認められてか、日本代表のジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチ(HC)が仕切るナショナル・デベロップメント・スコッド(NDS)にも呼ばれた。都内で4月10日から5日間、第4回NDSキャンプに参加する。
東日本大学セブンズ終了後にNDS入りの感想を問われ、間髪入れずに「率直に嬉しい」。好漢ぶりがにじむ。
「レベルが高い場所でやれる。いままで支えてくれた人たちに感謝したいです」
その白眉はタックル。名刺代わりの一戦となったのは、前年度の大学選手権決勝戦だ。今年の1月9日、秩父宮で帝京大と演じた80分間だ。
結局は26−33で屈し、向こうの大学選手権8連覇を許した。しかし青いジャージィの背番号「12」は、フィジカリティに自信を持つランナーたちに次から次へと刺さった。
以後、周りの自分への反応に変化を感じ取ったという。
「あの試合があってから、いまの自分がいる。自分の強みを出す時間が多くて、それを皆にアピールできたというか、知らしめることができたと思います」
日本ラグビー界では、CTBを外国出身選手が務めるケースが多い。
このポジションで問われる中央突破のための技能や身体能力に一日の長があると判断されてか、日本代表でもニュージーランド出身のマレ・サウ、ティモシー・ラファエレが相次ぎ台頭。2015年のワールドカップイングランド大会時の背番号「12」は概ね立川理道がつけていたが、大会前はクレイグ・ウィング(プール最終戦のみ先発)がその座につく可能性もあった。
ジョセフHCはこの国の流れを鑑み、比較的海外勢の少ない大学ラグビー界の人材に目をつけたのだという。
「トップリーグの各チームがCTBで外国人選手を使います。各企業が勝ちたいからと補強をしているのですが、それゆえ日本人強化が困難になっています。そのためここへ若い世代の選手を呼び、強化、育成したいと思っています」
期待に応えるか、当の本人はこう発す。
「日本代表なので、そこには日本人も食い込んでいかないと。自分もそういうプレーヤーになりたいです。持ち味はディフェンス。いかに相手がデカくてもひるまずに、前に出る。あとは、周りの選手からいいものを盗んで、持ち帰って、東海大にアウトプットしたいという気持ちが強いです」
NDSの第4回キャンプに加わったことは、若手中心の日本代表に入ったこととほぼイコールだった。鹿尾は22日から始まるアジアラグビーチャンピオンシップで、代表デビューを目指す。
(文:向 風見也)