国内
2017.03.08
アナリストという仕事 船戸渉(コカ・コーラレッドスパークス)
今やどのスポーツでも相手チームを分析して勝利に導く「アナリスト」が存在する。元バレーボール女子日本代表の眞鍋政義監督がコート上でアイパッドを持って大声を張り上げていた姿を目にしたことがあるだろう。試合中、会場内からデータを分析しリアルタイムに監督へと情報を送っていた。
10月7日、オフだったこの日、クラブハウスのパソコンで映像をひたすら編集し続ける姿がった。Jリーガーを目指したはずのサッカー少年は群馬県の当時の伊勢崎東高校でラグビーに出会い、いつの間にかどっぷりとその魅力にハマっていった。日本体育大学でもプレーを続け卒業後は地元の高崎高校で教員となる。しかし東京大学のコーチをしている時にこのアナリストという仕事に出会い人生が変わった。
■アナリストとの出会い
東京大学のコーチングをしている時に、当時の三洋電機やジャパンのアナリストをやっていた方にコーチングの一環で勉強してみないか? と声を掛けてもらって講習会に参加しました。ワールドカップでやった人だからいろいろと勉強できました。それがアナリストとの出会いです。
日の目をみない世界で「なにやっているの?」と思われるのが最初の印象だと思いますが、今はこの仕事も認知されてきました。トップリーグではヤマハ発動機ジュビロ以外は全てのチームにアナリストがいます。分析したことがチームに反映されて勝利に結びついて選手が満足できていると嬉しいですね。
チームよると思いますが、アナリストってデータなどの事実を伝える「数字屋さん」って考えられている部分もあります。でもラグビーって思いもよらないことが起きたり、数字では表せないことが起きたりしますよね。だから「机上の空論で語られても、違うんだよ!」って言われたこともありますよ(笑)。
所詮数字なんです。でも実際はグラウンドに立ってリアルな動きと数字を絡めて分析していきたいし、私はその数字をもとにグラウンドに立って選手にコーチングまでできるようになりたいんです。
■アナリストになるために必要なこと
好きこそ物の上手なれって言われますし、ラグビーが好きでパソコンで映像をいじったりすることが好きな人はできますよ。今年、山口(真澄)が選手を引退してアナリストになりました。全くアナリストに対する知識もない中、ラグビーが好きでチームを強くしたいという思いだけでやっています。それがあればやっていけます(笑)。分析ソフトが無くても、映像をとって分析して相手チームとの試合の対策を練る。それだけでも十分アナリストって言えますよね。分析ソフトは高いのは300万円とかしますが、安いのは10万円ぐらいであります。
映像を編集するだけなら普通のパソコンでできる時代ですし、高校生とかも十分にできます。
■尊敬するアナリストはいますか?
年齢は7つ下なんですけど、日本代表アナリストをやっている中島正太ですね。日本のラグビーではトップのアナリストです。南アフリカを倒した時のアナリストで、今回オリンピックでニュージランドを倒したセブンズでもアナリストをしていました。彼は傾向対策までコーチに伝えています。天気予報、レフェリーの笛の癖までもデータとして出すんです。それに応じた練習をその週に徹底してやるといいます。
■これからのアナリストの役割
これからは、データがただチームのために利用するだけでなく、ファンサービスにもつながればさらにいいと思っています。試合中にファンがホームページにアクセスし、リアルタイムでさまざまなスタッツを見て、監督の気分で試合が見られたりしたらおもしろいと思います。アメリカではすでにやっている競技がたくさんあります。
何度も言いますが数字屋さんだったらパソコンを扱えたら誰にでもできます。ただ、ラグビーを知っていたら、その数字をどう使うかもわかります。ラグビーをみる力が必要です。誰よりも世界のラグビーと今の日本のラグビーを見続ける。それが大切ですし、私も努力し続けてチームの勝利に貢献していきたいです。
(記事・写真 提供/『NOW RIVALS』)
※ 2016年11月発行 ISSUE 18 より転載
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