海外
2017.02.13
新しいのに再確認できる。浅原、サンウルブズ2季目のスクラムに進化を実感。
愛称は「バズ」。風貌などがディズニーの人気映画『トイ・ストーリー』の主要キャラクター、「バズ・ライトイヤー」に似ているのがその由来である。
浅原拓真。日本代表5キャップ(国際間の真剣勝負への出場数)を誇る29歳の右PRだ。身長179センチ、体重113キロと決して大柄ではないが、所属先の東芝で名手と謳われてきた。国内最高峰トップリーグでは、2015年度にベストフィフティーンに選ばれている。
いまは国際リーグのスーパーラグビーを見据える。参戦2年目となる日本のサンウルブズへ2季連続の加入を果たし、新たに就任した長谷川慎スクラムコーチの指導を受ける。
「慎さん(の指導に)は、共感できるところが多い。東芝にいたジョー・バラカットという白髪のオーストラリア人コーチの言うことと、重なっていることがあって…」
長谷川コーチは、2011年度からヤマハのFWコーチとして強力スクラムを編んできた。浅原にとってはライバルチームの名セコンドで、両チーム間におけるスクラムのロジックには少なからず違いはあろう。
それでも、初めて長谷川コーチの指導を受けた浅原は、東芝の元FWコーチであるジョセフ・バラカットの教えを改めて思い返した。「胸を張る。(相手に対して)壁になる…」。具体的には、両脇を相手に挟まれる右PRの姿勢や心構えを再確認できた。
「そこ(自身が大事にしてきた基本)に加えて、さらに新しい要素も入ってきている。進化できるな、という感じはあります」
昨季は、開幕直前のチームへ「追加招集」の形で帯同。スクラムの専門コーチがいないなか、右PRの主戦級として14試合を戦った。
サンウルブズからのオファーをもらった時期には、アイルランドの強豪クラブ、アルスターからもラブコールを受けていた。東芝で世話になったバラカットが、同部のアシスタントコーチを務めていた縁からだ。合流を請われたタイミングで自身の結婚式を予定していたため、誘いには応じられなかった。その延長線上で、参戦初年度に1勝と苦しむサンウルブズの最前列で耐え続けたのである。
前年度のサンウルブズは、右PRの台所事情が厳しかった。拓大の具智元がチーム方針から左PRに転じ、パナソニックの平野翔平はシーズン途中に離脱。浅原は垣永真之介(サントリー)と2人で主戦の右PRを務め、そのまま8月から日本のトップリーグに乗り込んだ。蓄積疲労からか、冬場にはひどく腰を痛めていたという。
かたや今季のスコッドには、自身と同じ右PRが計4人いる。ホンダ入りした具が2季連続で加わり、昨秋の日本代表に入ったヤマハの伊藤平一郎、キヤノンの山路泰生もグラウンドで汗を流す。定位置争いは激化しそうだが、浅原は「それはありがたいです。去年は試合を経験できたことはよかったですが、疲労もたまったので」と実感を込める。
個々の体調を考慮した練習計画がなされそうな今季は、グラウンド内外でスクラムの質を高められそうだという。長谷川と同じヤマハ出身の伊藤たちと、どんどん会話を重ねてゆきたい。
「普段からスクラムのことを考える。あとは、横とのコミュニケーションですね」
2月1日に都内で始動したサンウルブズは、5日から福岡でキャンプをおこなっている。12日には北九州へ移動し、翌日からさらにトレーニングを積む。まずは18日にあるトップリーグオールスターズとの壮行試合で、手応えをつかまんとする。
(文:向 風見也)