セブンズ 2016.11.28

「ラグビーがおもしろい」(黒川ラフィ)。元143キロ左腕の夢は五輪出場。

「ラグビーがおもしろい」(黒川ラフィ)。元143キロ左腕の夢は五輪出場。
177?、77?の22歳。ピッチャーとして憧れていたのは松坂大輔。(撮影/松本かおり)
 左腕から繰り出されるストレートは最速143キロ。プロ野球のスカウトもその名を知る存在だった。
 12月2日〜3日におこなわれる「HSBC ワールドラグビーセブンズシリーズ 2016-2017」の第1戦、ドバイ大会に向けてすでに日本を発った男子セブンズ日本代表。その中には鹿児島大の中尾隼太らユニークな選手も含まれている。国内シーズン真っ只中の時期ということもあるが、通常の枠にとらわれずに才能を探し出す方針もセブンズの特徴。知る人ぞ知る存在が発掘されている。
 今回のツアーメンバーからは漏れたが、選考の場にもなった11月17日からの候補合宿には、中尾ら以外にも気になる存在がいた。
 そのうちの一人が練習生として参加した、専修大学4年の黒川ラフィだ。インド人の父(サムオマーさん)と日本人の母の間に生まれたアスリートは、幼い頃から野球に熱中し、福岡・筑陽学園高校時代は左腕エースとして活躍。オリックスや広島のスカウトが試合の視察に訪れ、将来を嘱望される存在だった。
 ただ専大に入学、野球部に入部するも、肘を故障して手術するなど不運に泣く。そんなときに同じ伊勢原グラウンドで練習するラグビー部の村田亙監督に誘われ、3年生の春からラグビー部に入り、活動を続けてきた。
 140キロ超のストレートを投げ込んでいた肉体は全身バネ。瞬発力があり、50メートルを5秒9で走る。WTBとしてプレーし、今季もジュニア戦の2試合でプレーした。
 ラグビーを始めたばかりの頃はいろいろと戸惑った。
「野球、特にピッチャーにはあまり縁のないコンタクトプレーは難しかったですね。ディフェンスも。タックルに入れてもつながれたり」
 高い身体能力でそれなりに対応はできても、プレーの奥深さを感じた。
 それでも、野球では感じられない感覚に惹きつけられた。
「やっていて楽しいんです。ピッチャーって、決してそうではないのですが、ひとりでやっているような気になるんです。でもラグビーは自分だけじゃないという感覚が強い。チームプレーが気に入っています」
 もっともっと経験を積んで、将来はオリンピックを目指したい。今回の合宿に参加して、トップ選手のコンタクトの強さ、パススキルとはまだまだ差があることを実感する一方で、自信のあるフィットネスでは通用する手応えを得た。
「まだまだ足りない部分がわかりましたが、こういう機会を得て慣れることで、レベルアップしていけると思います」
 卒業後もラグビーを続ける意志は強い。自分の持つ力を伸ばせる場所を探し、野球では届かなかった高みを目指す。

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