トライネーションズ開幕 前W杯王者ボクス、覚醒した豪州に惨敗
南アフリカ(スプリングボクス)、ニュージーランド(オールブラックス)、オーストラリア(ワラビーズ)の南半球3カ国による「トライネーションズ」は23日、オーストラリアのシドニーで開幕し、地元ワラビーズが39-20でスプリングボクスを破り、今年初勝利を挙げた。17日にサモア戦惨敗を経験したワラビーズは80分間の集中力が高く、フォワード、バックスともに躍動感あふれるプレーで5トライを獲得。特に、戦列復帰したSOクーパー、先発FBビールのブレイク力は切れ味鋭く、全体的なコンビネーションも見事に機能して、2軍クラスでチーム結成した南アフリカを圧倒した。
前半7分、ワラビーズはSOクーパーが自陣22メートル内から柔らかいステップでブレイクスルーに成功すると、FBビール、WTBオコナーとつないで敵陣22メートル内に入り、相手の守備隊形が整わないうちに左へ速攻、最後はPRアレグザンダーがトライを決めた。先制して気が楽になったワラビーズはリスタート直後、今度はSHゲニアが自陣22メートルからハーフウェイ付近までブレイク、サポートしたWTBイオアネがディフェンダーを寄せつけず、50メートルを走り切って追加点。後半も先に得点したのはワラビーズで、SOクーパーのキープ力とWTBオコナーのキャッチングへの執念が実を結んだ。他のトライ獲得者は、HOモーアとCTBアシュリー=クーパー。
一方のスプリングボクスは、故障者続出とはいえ、ワールドカップ(W杯)前王者の面影はなかった。途中出場したHOラレペラがテストマッチ初トライ、試合終了5分前には主将スミットがインゴールへダイブし、意地を見せたが、セットプレー、タックル、戦術に目を見張るものはなかった。
4年前、南ア前監督の知将ジェイク・ホワイトは、トライネーションズで主力選手を休ませ、数カ月後のW杯で優勝を遂げることに成功した。しかし、今回のボクスにそんな余裕はない。中心選手のひとりと期待されていたLOアンドリース・ベッカーは、来週中の足首手術を決断し、W杯出場は絶望となった。母国でリハビリを続ける約20名の“1軍クラス”にしても、休養後のハイパフォーマンスが確約できる選手は誰もいない。それに、ピーター・デヴィリアス現監督は、ホワイト前監督ほど冷静でもなければ、敗戦から立て直すための分析も得意としない。おまけに、選手との信頼関係を疑う声さえ存在する。
30日に、スプリングボクスはオールブラックスと対戦予定。もし惨めな80分間を繰り返すようならば、ボクスのW杯連覇は危うい。2007年にエリスカップを母国に持ち帰ったとき、主将ジョン・スミットはこう言った。「南アフリカは誇り高きラグビーの国だ」。ラグビーへの情熱と絶対的自信、憎たらしいほどの勝利への執念、反則すれすれのハードプレー、闘将・壊し屋・頭脳派・走り屋…プライドを宿した15人、いや30人のスペシャリストがいて、ラグビー南アフリカ代表は世界の頂点に立ったはず。それらが1つも表に出てこないスプリングボクスなど、恐れるに値しない。