ラグビーから一度離れて分かった。慶大FB丹治辰碩、ふたたび走り始める。
(写真/松本かおり)
黒黄の15番は鋭く、力強くて、何度もトライラインを越えた。丹治辰碩(2年/たんじ・たつひろ)だ。慶應高校時代には花園に出場し、高校日本代表にも選出された選手だ(ともに2014年度)。怪我で遠征には不参加も、豊かな才能は高く評価されていた。
しかし、慶大入学後はアメリカンフットボール部に入部。もうひとつの楕円球のスポーツに取り組んでいた。しかし、昨夏に同部を退部した後、英国へ留学。帰国してトレーニングを再開し、今年2月に高校の同期や先輩の待つラグビー部へ入部した。
先の全早慶明戦にも登場したが、公式戦での鮮烈デビューを果たしたのが昨日(5月1日)おこなわれた関東大学春季大会の青山学院大学戦だった。丹治はFBで先発すると、後半22分にピッチを去るまでに3トライをマーク。ボールタッチも多く、フィニッシャーとしても、チャンスメーカーとしても活躍した。
FW、BKとも良く前に出たチームは、ディフェンスで圧力をかけてボールを奪取し、切り返しからトライを奪うシーンも多かった。59-17の完勝。丹治は積極的に攻撃に絡んでボールを前に運び、チームに勢いを与え続けた。
試合後、丹治の表情は清々しかった。一度はラグビーを離れたことで、このスポーツの良さにあらためて気づいた。
「(高校卒業までに)10年ラグビーをやったので、違うことに挑戦してみようと思ってアメリカンフットボール部に入ったんです。でも作戦とか決めごとが多くて…やっぱり、いま目の前で起きていることに判断して動くラグビーの方が楽しいな、と」
短い期間だったが、英国に留学してローカルクラブでプレーしたことも、あらためてラグビーそのものや、カルチャーの素晴らしさを感じるいい機会になった。ケンブリッジ大学チームの一員として、英国遠征中の帝京大と戦うメンバーにも呼ばれた。
「帰国して大学の試合を見ていると、黒黄のジャージーを着て、またプレーしたいなと思ったんです。一時期、筋肉が落ちて(体重が)76?ぐらいまで落ちていたので、ウエートトレーニングを再開しました。もともとフィットネスには自信があったから、集中して筋トレだけに取り組んだ。それも(復帰に向けて)よかったのかもしれません」
ラグビーへの復帰の意志を伝えると、同期はとても喜んでくれた。
「いい仲間に恵まれています。また頑張りたい」
高校時代の同期で、この日はSOとしてプレーした古田京と息の合ったプレーを何度も見せ、「お互いに考えていることが分かるので、本当にやりやすい」と話した。
「運動量には自信があります。チームの突破口になるプレーをしたい」
現在の体重は86?。リスタート後すぐに全開で動けているのは、体の準備ができていただけでなく、リフレッシュした心の充実もあるからだ。
【週末の関東大学春季大会の結果】
4月29日 関東学大○35−31● 日大
5月1日 流経大 ○66−33● 明大
青学大 ●17−59○ 慶大
大東大 ○93− 7● 拓大
専大 ○50−27● 日体大